半導体のオリンピックと呼ばれる回路技術の国際会議「ISSCC 2010」が,米国で2010年2月上旬に開催される。投稿論文数は,リーマン・ショックの影響が直撃した前回に比べて約1割増加し,ほぼ例年並みに戻った。採択論文数は前回と同程度にとどめており,「厳選に厳選を重ねた結果,質の高い論文がそろった」(ISSCC極東委員会)という。半導体市場の回復に歩調を合わせるように,今回は特に企業からの論文が増えている。半導体開発現場に活気が戻りつつあるようだ。

投稿論文数が増加に転じる
(ISSCC極東委員会の発表資料を基に本誌が作成)

 2010年2月7~11日に米国サンフランシスコで開催される「ISSCC(International Solid-State Circuits Conference)2010」の投稿論文数は638件と,リーマン・ショックのあおりを受けて落ち込んだ前回の582件から約10%増加し,例年並みの投稿数に回復した。その一方で,採択論文数は210件と,前回比3%増にとどまる。この結果,論文採択率は前回の34.9%から32.9%に下がった。

 採択率低下の影響かどうかは定かではないものの,ISSCC 2010では,採択論文数に占める「企業」と「大学/研究機関」の比率が大きく変化した。前回は,企業が47%,大学/研究機関が53%だったが,今回は,企業が51%になり,49%の大学/研究機関を逆転している。

 採択論文数の地域別内訳を見ると,欧米の伸びが目を引く。欧州は前回の52件から59件へ,北米は78件から86件へと,それぞれ増加した。これに対して,アジアからの採択論文数は前回の73件から65件へと減少している。ここ数年,1~2件の採択論文数を確保してきた中国本土からの採択論文は0件,台湾も前回の17本から9本へと半分近くに減った。中国本土からの投稿論文数は,大学を中心に前回より増加したものの,採択には結び付かなかった。台湾からの投稿論文数は前回と同程度だったが,採択率が低下したという。

Samsung社と東芝が健闘

 中国本土や台湾が苦戦する中,アジア地域で健闘が目立つのが韓国である。採択論文数は前回から5本増やして19本となり,国別の採択論文数では,米国,日本に次ぐ3位につける。

『日経エレクトロニクス』2010年1月25日号より一部掲載

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