世界最大の家電展示会に活気が戻った。景気低迷の影響で,昨年より出展者数は200社程度減ったものの,参加登録者数は12万人以上と増えたようだ。市場を再び成長軌道に導くネタ探しをする参加者などで会場は賑わった。こうした中で特に注目を集めたのが,テレビ・メーカーが大手コンテンツ・プロバイダーを巻き込んで3次元(3D)映像への対応を前面に押し出したことや,電子書籍端末などの成長市場に,エレクトロニクス・メーカーが群がったことである。

3D映像が本格普及へ,業務用カメラから超大画面テレビなどの次世代技術が登場

<テレビ>
ついに“元年”,3Dは当たり前に

 米国では,2010年の販売台数が430万台,2013年には4台に1台が3次元(3D)映像の対応品になる──。CESの開幕に先立ってCEA(米家電協会)が発表した対応テレビの販売台数予測に,3D映像がもたらす特需への家電業界の期待が凝縮された。

 今回のCESの主役は,前回に引き続いて3D映像だった。大手家電メーカー各社は,3D映像対応のテレビや将来技術の展示に力を入れた。前回と異なるのは,パナソニックや韓国Samsung Electronics Co., Ltd.,ソニーなど大手メーカーが2010年春~夏に発売する3D対応のテレビやBlu-ray Disc(BD)プレーヤーを披露すると同時に,コンテンツ大手が家庭での3D対応を本格表明したことだ。

 テレビでは,40~60型前後でフルHD(1920×1080画素)対応の複数機種が一斉に登場する。2009年12月にBD装置で3D映像を扱う仕様が決まったことを受け,3D対応のBDプレーヤーも会場に並んだ。2009年12月に全米で公開された「Avatar」など3D映画の興行成功で,対応のBDソフトも相次いで登場しそうだ。メガネをかけて3D映像を視聴するスタイルは,当たり前になりそうな勢いである。

コンテンツ企業を巻き込む

 ただ,3D対応自体は,もはやテレビなどの差異化につながりそうもない。低価格帯の液晶テレビで米国でシェア首位を争う米VIZIO,Inc.は2010年8月に3D対応機種を米国で投入すると発表。Hisense Electric Co.,Ltd.など中国の家電大手も3D対応機を出展した。3Dテレビは登場と同時に価格競争にさらされそうだ。

 大手メーカーは,コンテンツ業界との連携で3D映像分野でのブランド力を維持しようと躍起である。3D映像に対応した機器のプロモーション関連での提携が多い中で,一歩踏み込む姿勢を見せたのはソニーだ。同社は2011年の放映開始を目指し,ケーブルテレビ専門局の米Discovery Communications,Inc.や,映画館用システムのカナダIMAX Corp.と合弁で3D映像専門の放送会社を立ち上げる。2010年2月には,3D映像の制作者育成を目的にした施設を米Sony Pictures Entertainment社の敷地内に開設するなど,グループ内の連携強化を前面に出した。

『日経エレクトロニクス』2010年1月25日号より一部掲載

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