半導体製造技術の国際会議「IEDM 2009」が,2009年12月上旬に米国ボルティモアで開催された。注目を集めたのは,2009年末以降量産が本格化しつつある32nm/28nm世代の半導体製造技術である。Intel社やIBM連合の一挙手一投足に,会場を埋め尽くした技術者はくぎ付けになった。さらなる微細化については今回,16nm世代の実現が見えた。0.5V動作の混載SRAMを筆頭に,低消費電力化技術の開発にも拍車が掛かってきた。

チップ上に3種類のトランジスタを同時に集積可能
Intel社の32nm世代のSoC向け製造技術では,トランジスタにはhigh-kとメタル・ゲートを採用している。Intel社の資料を基に作成。

 2009年12月9日,午前9時の米国ボルティモア。半導体製造技術関連で世界最大の国際会議「2009 IEEE International Electron Devices Meeting(IEDM 2009)」が開かれているHilton Baltimoreの会議場は,異様な熱気に包まれていた。数百人は優に入る会議場のイスはすべて埋まり,立ち見でも聴講しようとする技術者が引きも切らない。

 多くの技術者が会場に押し寄せたのは,現在の半導体業界を牽引する2陣営による注目の発表が控えていたからだ。一つが,半導体世界最大手の米Intel Corp.が満を持して披露する32nm世代のSoC(system on a chip)向け製造技術。もう一件が,今や半導体業界で世界最大の技術開発アライアンスとなった米IBM Corp.連合による28nm世代のSoC向け製造技術である。IBM連合のこの発表に名を連ねた半導体メーカーは,IBM社に加えて7社である。

高性能のIntel,低電力のIBM

 処理性能で抜きんでるIntel社,低消費電力化で優れるIBM連合──。今回の両陣営の発表から導き出せる結論は,こうだ。すなわち,対象とする機器によって,Intel社とIBM連合のSoC製造技術は明確に向き不向きが分かれる。

 例えば,テレビやBlu-ray Discレコーダー,セットトップ・ボックス(STB)などの据置型AV機器,およびルータなどのネットワーク機器といった高い処理性能が要求される機器を想定した場合は,Intel社の製造技術が優位である。IBM連合に比べて,より処理性能が高いSoCを実現できるからだ。一方,携帯電話機やデジタル・カメラ,ビデオ・カメラといった携帯型機器向けでは,IBM連合の製造技術に分がある。より消費電力が低いSoCを実現しやすいためである。

『日経エレクトロニクス』2010年1月11日号より一部掲載

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