携帯電話機などの小型パネルや照明向けに,有機ELパネルの市場拡大が進んでいる。これらを追い風に,有機ELパネルの大型化があらためて視野に入りつつある。2010年以降には20型以上の有機ELテレビが市場に登場する可能性が出てきた。さらなる大型化・低コスト化に向けた技術開発も着実に進んでいる。“次世代薄型テレビの本命”の現状を探る。

じわじわと浸透する有機EL
現在,携帯電話機やスマートフォンを中心に,有機ELパネルの搭載が本格化し始めた。一方,据置型機器への搭載は苦戦しているが,2010年以降は大型化も視野に入りそうだ。

 「CRTを凌駕する表示性能」「究極の黒を表現」「厚さ数mmの超薄型」──。

 その性能の高さから,有機ELパネルが,薄型テレビ向けの表示パネルの本命と称されて久しい。2007年10月には,ソニーが世界で初めて11型の有機ELテレビの量産化にこぎ着けた。だが,後が続かない。2007年当時は,東芝や韓国Samsung Electronics Co., Ltd.,などのテレビ・メーカーが,2009年を目処に有機ELテレビを量産する意向を表明していた。少なくとも2009年末時点で,両社から有機ELテレビが市場投入される気配はない。

大型化に積極的なLG

 進歩が止まったように見えるテレビ向け大型有機ELパネル。しかし現在,その開発があらためて活性化している。

 中でも目立った動きを見せるのが,韓国LGグループである。韓国LG Electronics, Inc.は,2009年8月に15型の有機ELテレビを発表し,同年12月に韓国で発売した。販売価格は300万ウォン(1ウォン=0.075円換算で約22万5000円)だ。

 搭載する有機ELパネルは,グループ会社の韓国LG Display Co., Ltd.が開発した。ピーク輝度が450cd/m2,コントラスト比は10万対1以上,色再現範囲はNTSC規格比で98%を実現する。駆動素子(TFT=thin film transistor)用の材料には,「SPC(solid phase crystallization)」と呼ぶ,高温プロセスで結晶化した多結晶Siを使用する。有機EL発光層は,R(赤),G(緑),B(青)3色の発光材料をそれぞれ,シャドー・マスクを使った真空蒸着法で塗り分ける方式で成膜した。さらに,キャビティ(多重反射干渉)構造を採用して,色再現範囲を拡大した。

『日経エレクトロニクス』2009年12月28日号より一部掲載

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