安全と聞いて,どんなイメージを持つだろうか。ものづくりに携わる人ならば,「安全なものを,安全な職場で,安全に造る」ことを頭に浮かべるかもしれない。もっと広く,「災害と犯罪のない安全な社会で,だまされたりしないで,安心して生活できる」ことをイメージする人も多いに違いない。
そのほか,医療関係者にとっての安全や経営者にとっての安全など,安全に対するイメージは実に多様だ。これまで社会の安全は,各分野の関係者の懸命な努力によって確保されてきた。そのため,これらを普遍的にとらえ,統一された手法で体系化して学問として扱うことはかなり難しい。ボトムアップが基本なので,各分野の専門性や個別事情に強く依存しているためだ。
〔以下,日経ものづくり2010年1月号に掲載〕
明治大学 理工学部情報科学科 教授