「アルミニウム合金と鋼のいいとこ取りをしたい」。こう語るのは,神戸製鋼所技術開発本部材料研究所材質制御研究室主任研究員の杵渕雅男氏。同社は自動車の軽量化を目的に,アルミ合金の軽さと鋼の強さを生かした新しいアルミ合金/鋼ハイブリッド構造を提案する)。

 同ハイブリッド構造自体は既に,欧州を中心に実用化されている。ただし,アルミ合金と鋼の異材接合には,主にリベットと接着を併用した機械的接合を使う。接合強度が高く,異種金属による接触腐食も防げるといった長所がある。その一方で,(1)コストが高い(2)線接合ができない(3)強度や板厚など適用素材に制限がある──といった課題があった。特に,リベットやボルトなどを使うと部品点数や工数が増え,コストアップ要因となってしまう。

 同社ではこうした課題を解決し,同ハイブリッド構造の適用を拡大するために「今ある技術/設備を念頭に」(同氏),溶接に着目したのである。

 現実問題,アルミ合金と鋼の溶接は難しい。接合界面に鉄とアルミのもろい金属間化合物が生成し,接合強度を低下させるからだ。逆に言えば,この金属間化合物の過剰生成を抑えることが実用化のポイントとなる。具体的には,溶接技術として点接合の抵抗スポット溶接,線接合のMIG(MetalInert Gas)溶接とレーザ溶接を採用し,「金属間化合物が薄く,広く,均一に生成するような溶接条件を洗い出した」(神戸製鋼所の杵渕氏)。

〔以下,日経ものづくり2010年1月号に掲載〕