Liを使った2次電池の開発に乗りだしたソニー。さまざまな化合物の評価を繰り返し,正極をLiCoO2,負極材料をハード・カーボン(HC)とすることで目指す電池が出来上がった。試作ラインで得られた電池の性能は良好だ。いよいよLiイオン2次電池を量産化できる─。しかし,量産開始直前の 1992年7月,量産ラインで造った製品の性能が実用に堪えないとの報告が届いた。今回は,トラブルの原因とその対応について解説する。(本誌)

西 美緒
元ソニー 業務執行役員上席常務

 第2回(本誌2009年11月2日号)では,「新設したLiイオン2次電池(LIB)の製造ラインで量産試作したところ,特性が悪くて量産ラインの見直しを迫られた」というところまでお話しした。特にサイクル特性が悪かった。「悪い」という表現でさえ褒め言葉と感じられるほどだった。

 量産工程の見直しが必要だという決定的な評価データが筆者の元に届いたのは,新装したLIB製造工場(福島県郡山市)のお披露目パーティーの開催当日である。やっとここまで来たという高揚と安堵感に浸っていたまさにその時,落とし穴に真っ逆さまに落とされてしまった。

『日経エレクトロニクス』2009年11月30日号より一部掲載

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