「メカトロ講座」は,茶運び人形の開発をテーマに,一連の作業を疑似体験することで,メカトロ機器の開発手法を体得できるように狙った企画です。補習編では「回路図は怖くない」をモットーに,概念設計編や詳細設計編で紹介してきた回路図の一部を取り上げ,回路図の基本的な見方について解説します。

 前回に引き続き,超音波センサ受信部の処理回路を題材に,アナログ回路の基本を解説する。今回は,可変ゲインアンプによる超音波信号の増幅,同信号の検波(ピーク値検出),および同信号の到達時間を検知するレベル比較のためのコンパレータ回路について取り上げる(図)。

ラダー抵抗で減衰率を可変に

 可変ゲインアンプは,その利得(ゲイン)を外部の電圧で変化させられる信号処理用アンプだ。アナログ型とデジタル型の両方があるが,いずれもアナログ電圧でゲインを制御する。

 図の回路で可変ゲインアンプを採用しているのは,超音波センサによる測距計を使っているため。測距対象の表面で反射して受信部に戻ってくるパルス信号の電力レベルは,測距対象までの距離が長くなるほど小さくなる。同距離,言い換えれば反射波が戻ってくるまでの時間に応じてゲインを増大させることで,次段の検波回路に一定の強度のパルス信号が加えられるようになるのだ。

〔以下,日経ものづくり2009年12月号に掲載〕

図●超音波センサ受信部の処理回路
白抜きの部分が今回の解説に関連している個所。
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大畠 覚(おおはた・さとし)
ラグビーセンサ 社長
専門分野はセンサ応用製品のシステム開発,組み込み機器の開発。東芝にてMEMS(Micro Electro Mechanical Systems),計測機器,防犯カメラシステム商品の開発に従事していたという経歴を持つ。