前回までの3回にわたって「原価企画の神髄」を解説してきた。読者の中には,そこで述べたように,厳しいコスト目標を立てて厳しい管理を実践してきたし,ユーザーが満足する機能など商品企画の意図もすべて盛り込んだのに,どうもコスト面ではCompetitorに勝てないような気がする,と感じている方もいらっしゃるのではなかろうか。実際,Competitorの商品を目にすると,そちらの方が安くて利益が出ているように見えるし,販促も積極的に展開しているように感じる。「おれたちは計画通りに『良い設計』をしてきたのに,なぜこうなるんだ」と,不安を抱く。
至極もっともである。実は,市場で本当に勝つためには,まだまだ乗り切らなければならない山があるのだ。悔しいかな,設計者が言う「良い設計」=「良いコスト」とは限らない。なぜなら,そこには造り方(ものづくりの巧拙)とコスト水準という問題が潜むからだ。ただ,これだけははっきりと言える。「悪い設計」≠「良いコスト」ということである。
〔以下,日経ものづくり2009年12月号に掲載〕
VPM技術研究所 所長