写真:菅野勝男

 最近,欧州の工作機械が頑張っています。特にドイツです。これまでは通貨高に襲われると必ず産業規模が収縮していたんですが,2008年くらいまでのユーロ高では生産量があまり減らなかった。結果として一時期,日本に肉薄しました。日本側は切削用工作機械だけで比較するので,迫られたという感覚はあまりなかったかもしれないけど,国際基準ではプレス機械を含むカテゴリーで比べるから,その数字で見ると本当にギリギリでした。

 なぜ強くなれたのでしょうか。ここから先は私の推測も入るのですが,三つの要因に整理できると思います。

 第一に,妙なこだわりを捨てたこと。欧州の工作機械は国際分業化していて,一番の高級品はスイスが造り,もう少し汎用的なものをドイツ,一般的なものはイタリアやスペインの一部,低価格品は東欧などそのほかの地域という形でずっとやってきた。ピンチに陥ってもその枠組みは変えず,むしろ先鋭化して打開していくというのが従来の動きでした。ところがこの10年ほどで,ドイツの一流メーカーが少し下の領域の製品にも手を出し始めました。
〔以下,日経ものづくり2009年12月号に掲載〕(聞き手は本誌前編集長 原田 衛)

牧野二郎(まきの・じろう)
牧野フライス製作所 取締役社長
1939年東京都生まれ。1967年牧野フライス製作所入社。1974年取締役,1977年営業本部長,1978年常務取締役,1979年専務取締役と進み,1982年技術本部長。1985年から現職。1997年に日本工作機械工業会副会長に就任,現在に至る。