環境車が勢ぞろいした第41回東京モーターショーの会場で異彩を放ったのが、トヨタ自動車「レクサスLFA」のプロトタイプ。国内メーカーの市販車として初めてCFRPボディをまとい、専用開発のV型10気筒エンジンを載せた。さらに500台限定で3750万円という価格も日本車の常識を覆した。軽量化、高性能化でトヨタグループの技術力を結集したLFAの全貌を明らかにする。

 “トヨタ自動車らしくないクルマ”。「レクサスLFA」をひと言で表現すればこうなる。“実用品”として便利で使いやすいクルマを大量生産するトヨタの“基本”とは対極にある500人のためだけの超高級スポーツカーだからだ(国内の予定価格は3750万円程度、発売は2010年12月)。
 トヨタはこれまでハイブリッド車をはじめ低燃費のクルマの開発に注力してきた。しかし、新社長の豊田章男氏は「クルマの味」が重要として、「燃費に優れるクルマを運転して低燃費を達成する楽しみに加え、自由に気持ちよく走れるスポーツカーも必要」と考える。これがLFAの生まれた背景だ。
 ただ、その突き詰め方は並大抵ではない。CFRP(炭素繊維強化樹脂)ボディにドライサンプのV型10気筒エンジンを積むLFAは、いわば公道を走るレーシングカーである。2年前の東京モーターショーでは日産自動車が「GT-R」を発表したが、こちらはいつでも使えるスーパーカー。価格も861万円からと実用品としては高いが、LFAははるかにその上を行く。

重量物はできる限り中央に

 レクサスセンター製品企画でチーフエンジニアを務める棚橋晴彦氏は「LFAの開発はレクサスがさらに一段上の高みに登るための挑戦」とする。具体的に目標としたのは、300km/hを超える最高速、スタートから100km/hまで4秒を切る加速力など。これらは結果的に、最高出力412kW(560PS)/8700rpm、最大トルク480N・m/6800rpmのエンジン、1480kgに抑えた車両質量などによって、325km/h、3.7秒として実現されることになった。
 だが、ただ速いことを目指したわけではない。LFAでは「超高速域での安定性」「コーナリング性能およびそのコントロール性」「十分なトラクション性能」などをバランス良く実現することを狙った。この条件を満たすレイアウトとして、前部にエンジンを置き、後部に変速機を置くトランスアクスル方式の後輪駆動を採用した(図)。
 その理由について、レクサスセンター製品企画の主査である田村千晴氏は「ミッドシップレイアウトも検討したが、高速での安定性を考えると前輪荷重が増やせるエンジンを前部に置く方式が有利。また、その方が操る楽しみが演出できる。その上で、運動性能を向上させるために、重量物を極力中央に配置して慣性モーメントを低減した。ラジエータを後部に搭載することなどで前後の質量配分は48:52にできた」と語る。

以下,『日経Automotive Technology』2010年1月号に掲載
図 トヨタ自動車「レクサスLFA」のカットモデル
排気量4.8LのV型10気筒エンジンを前部に積み、後部の変速機との間をトルクチューブでつないだトランスアクスル方式を採用。ボディの骨格はCFRP(炭素繊維強化樹脂)製である。全長4505×全幅1895×全高1220mm、ホイールベースは2605mm。