雑誌 Cover Story

主役を狙う伏兵技術

一発逆転に向け準備万端

2009/11/19 11:05
 

 技術開発は筋書きのないドラマ。しかし現実には、誰もが「順当に行けばこう進むだろう」と考える筋書きがある。その筋書きを破壊し、書き換え、自分が前に出ようと、主役から外れた“伏兵”たちが自分の技術を磨く。キャパシタやインホイールモータ、SOFC(固体酸化物型燃料電池)の、伏兵としての実力を探った。

Part 1:ただいま潜伏中

本命がいつまでも本命とは限らない 技術磨き、逆転うかがう伏兵たち

今は主役になれなくても、状況次第で表舞台に飛び出しそうな技術がある。技術そのものの実力は、主役との間に大きな優劣がないことが多い。どちらの立場になるかは、周囲の状況などに左右される。それでも他力本願で浮上するということはない。伏兵たちはそれぞれの事情に合わせ、浮上を期して戦っている。

 自動車技術の将来は、今描いているストーリー通りに順当に進んでいくのだろうか。電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)は電源としてLiイオン2次電池を積み、モータは車体側に1台だけ搭載し等速ジョイントを介して車輪を駆動し、その先、FCV(燃料電池車)の時代にはPEFC(高分子固体電解質型燃料電池)が主役になる…。
 素直に考えれば、それは正しい。高い確率で実現するだろう。ただし、確率は高いが100%ではない。技術の進み方はシナリオ通りに行くとは限らない。思ったより流動的なものである。主役がいつの間にか入れ替わっていたということは過去にもよくあった。

以下,『日経Automotive Technology』2010年1月号に掲載

Part 2:HEVにキャパシタ

Liイオンは電池だけではない エネルギ密度で急接近

敗北したように見えたキャパシタが、新兵器を引っさげて再び戦場に現れた。電池には及ばないが、ケタ違いでない程度のエネルギ密度を持つLiイオンキャパシタがそれだ。質量エネルギ密度以外の要素で押していけば十分に競争力がある。しかし今のところ文字通りの伏兵。HEVの量産規模に対応できるメーカーはない。技術はそろった。あとは決断するだけだ。

 3年弱で3倍…アドバンスト・キャパシタ・テクノロジーズ(ACT)が開発しているキャパシタの質量エネルギ密度の推移を見ると、2005年の初頭に10Wh/kgなかったものが、2007年の後半には30Wh/kgと、大幅に伸びている(図)。ムーアの法則が「1.5~2年で倍」だから、それに近い勢いだ。

以下,『日経Automotive Technology』2010年1月号に掲載
図 アドバンスト・キャパシタ・テクノロジーズが開発しているキャパシタの質量エネルギ密度の推移
2004年4月のプロットは同社が設立したときの通常の電気2重層キャパシタ。

Part 3:EVのモータをインホイールに

あきらめたわけではない 直接駆動か遊星かサイクロイドか

動力伝達部品をなくせる、空間設計が自由にできる…。電気自動車(EV)時代の駆動方式として登場したインホイールモータ。しかし2009年、各社が一斉にEVを発表したとき、その姿はどこにもなかった。理想を追う技術者の夢に過ぎなかったのか。いや、熱意は冷えてはいない。インホイールモータ対通常の1モータの開発競争は、これから本格化する。

 2005年5月、三菱自動車の社内では、EV「i-MIEV」のモータをどうするかが議論されていた。「i-MIEV」の大文字の「I」はIn-wheel motorの「I」。インホイールモータで駆動するというのが開発の大方針だった。動力伝達機構が要らない、広い空間を占有せず、自由な設計ができるなど、さまざまな利点を引き出せる。

以下,『日経Automotive Technology』2010年1月号に掲載

Part 4:燃料電池車にSOFC

究極のレンジエクステンダー ガソリンで走り、インフラの心配なし

日産自動車 総合研究所社会・フロンティア研究室 中島 靖志氏
同研究室次長 内山 誠氏
同研究室主管研究員 三輪 博通氏

日産自動車は2010年に「リーフ」を発売するなど、EVに力を注いでいる。一方、研究部門は、その次を考えている。EVは万能ではないからだ。FCV(燃料電池車)の電源に、主流であるPEFC(高分子固体電解質型燃料電池)でなく、自動車用では伏兵だったSOFC(固体酸化物型燃料電池)を使う研究が始まった。研究の最新状況について、日産自動車が報告する。(本誌)

 環境対応車にはまだ本命がない。日本自動車工業会が各種の環境対応車の得失を比較した結果がある(表)。一長一短でどれも決め手がない。EVは航続距離が短い、FCVはコストが高く、インフラ整備が難しい。課題の中で、航続距離やコストの問題は自動車メーカーや協力メーカーだけで解決できる。ただし、燃料インフラの問題は莫大な投資と長い期間が必要で、メーカー単独では解決できない社会的な問題だ。FCVがインフラに依存するのは、積んでいる燃料電池がPEFCであることが原因だ。

以下,『日経Automotive Technology』2010年1月号に掲載
表 環境対応自動車の得失比較表(日本自動車工業会)

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