桃田 健史
ITジャーナリスト

 台湾が,政府主導でLEV(light electric vehicle)の開発に乗りだしている。LEVとは,小型の電動車両のことである。明確な定義はないが,電動の2輪車や3輪車,医療・福祉用の電動4輪車を指すことが多い。台湾では,日本の経済産業省に相当する経済部所管の工業技術研究院がLEVに特化した開発プロジェクトを主導し,研究成果を国内製造業者に公開して量産化を実現している。

 政府が目指すのは高品質・高信頼性を有するLEVの開発,そして電池制御システム「BMS(battery management system)」を主体とした知的財産権の確立だ。中国市場で2008年に約2000万台販売された,薄利多売型のLEVを目指しているわけではない。安価な製品とは差異化し,付加価値のある車両やその技術を浸透させるつもりである。LEVや,4輪の電気自動車(EV)が広く普及したときに世界の先頭に立つことを狙う。

研究開発で先端走る

 筆者は過去数カ月の間に日・米・欧と中国,台湾のそれぞれの地域でLEV関連の取材をしてきた。その中で,さまざまな「理想と現実とのギャップ」に直面した。例えば,LEVメーカーは小規模な場合が多く,中長期的な経営戦略を持たない。電源コネクタの形状や充電時のプロトコルなどは標準化されておらず,政府関係者や充電設備関係者が国際標準化機構(ISO)や国際電気標準会議(IEC),米エネルギー省(DOE)に対して過剰なロビー活動を繰り広げている最中である。

 そうした中,世界で最もLEVの研究開発が進んでいるのは台湾だったのである。そもそも,台湾には2輪車が多い。約2300万人の人口に対して,約1200万台ものガソリン・エンジンの2輪車が保有されている。

LEV開発の中心地

『日経エレクトロニクス』2009年11月02日号より一部掲載

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