「実践モジュラーデザイン」は,売れる製品とバランスさせ,最適な部品数で利益構造を改善する「モジュラーデザイン(MD)」について,体系的・実践的に解説するコラムです。

 設計のモジュール化とは,設計の思想や方法をインテグラル(擦り合わせ)型からモジュラー(組み合わせ)型に変えることである。その狙いは,“設計者は図面を描くな”である。新しく図面を描くから新しい部品,新しい品質問題が発生し,新しいコストが生まれる。品質・コストの保証ができたモジュール部品から“選ぶ設計”にして,“図面を描かずに造る”ことを目指す。

 モジュラーデザイン(MD)では,製品の機能上,必要不可欠な専用部品をモジュール化の主な対象とする。

 機械系の専用部品は,図のように,部品構成の垂直的なインタフェースと水平的なインタフェースが密接に絡んで諸元が決まる部品である。垂直的インタフェースとは,製品の目的性能を実現するのに必要な,製品/ユニット/部品間の性能的な相互関連と,それらを組み付ける上での物理的な相互関連のことである。水平的インタフェースとは,ユニットや部品をまたいで結果的に出てくる熱,振動,騒音などの不要な性能(結果性能)間の相互関連,およびユニットや部品のレイアウト上の相互関連のことである。

 エネルギ,物質,信号を変換する機械系製品の専用部品は,複雑に絡み合った垂直・水平のインタフェースの結果から得られるため,擦り合わせで諸元を決めざるを得ないことが多い。

 そこで,専用部品を標準化・モジュール化するには,複雑に絡み合った垂直的/水平的インタフェースを“見える化”しなければならない。その手段は,設計の方法や流れを文書化した設計手順書を作ることである。設計とは垂直的インタフェースと水平的インタフェースの整合取りをする仕事であるから,設計時にやることを書き出すことによってインタフェースが見えてくる。機械系製品の専用部品は,設計手順書作成の過程でモジュール化する。

〔以下,日経ものづくり2009年11月号に掲載〕

図●専用部品のインタフェース構造

日野三十四(ひの・さとし)
モノづくり経営研究所イマジン 所長,日本IBM 顧問
1968年に自動車メーカーに入社。1980年にトヨタ自動車のベンチマーキング開始。1988年にトヨタの部品共通化能力を超える手法を目指し,MDの研究を開始。2000年に経営コンサルタントとして独立。2002年に『トヨタ経営システムの研究』(ダイヤモンド社)を出版(韓,台,米,タイ,中で翻訳出版)。2003年に日本ナレッジ・マネジメント学会から研究賞受賞。2003年から日韓の重工業や電機メーカーなどでMDをコンサルティング。2007年に“製造業のノーベル賞”といわれる米Shingo Prizeから研究賞受賞。2008年から日本IBM顧問。