2010年以降,欧州向けの機械に求められる安全性レベルが上がる。機械の安全設計の原則を規定した国際規格「ISO13849-1」が2006年に改定されたが,日本のメーカーはこれまで移行を猶予されていた。しかし,その猶予期間が2009年末で終わる。改定への対応を怠れば,今後は機械を輸出できなくなるといった事態に陥りかねない。新規格では産業機械の安全性をどう設計・評価すればよいのか,規格を知り抜いた技術者が解説する。(本誌)

 機械の安全性を証明するためのルールが変わる。安全設計の原則を定めた国際規格「ISO13849-1」が大幅に改定され,その体系に全面移行しなければならない期限が迫っているからだ。今後は,欧州向けの機械や,同じレベルの安全性が求められる機械では,新規格への対応が不可欠となる。そこで本稿では,新規格に沿った具体的な機械の設計・評価手順を紹介する。

猶予期間は終了へ

 まず,規格自体や改定に至った経緯などを説明しておこう。

 ISO13849-1は,制御を利用した安全方策における設計原則の規格である。具体的には,安全方策に制御を用いる場合,危険事象のリスクに対し,十分な安全性を確保できる制御システムを構築しなければならないという原則だ。特に欧州では,産業機械の安全要件を規定した法令である「機械指令」において,「整合規格」の一つとして採用されている。

 つまり欧州では,ISO13849-1は機械の安全性を顧客などに証明する上で欠かせないツールである。日本の機械メーカーが欧州に輸出する際も,規格への適合が必要となる。

 そのISO13849-1の大幅な改定が2006 年に行われた。さらに同年には,機械指令も改正となる。こうした動きに伴い,機械指令の整合規格もISO13849-1の旧版(ISO13849-1:1999)から改定版(ISO13849-1:2006)に変わったのだ。

 ただし,日本の機械メーカーは直ちに改定版への適合を迫られたわけではない。改正機械指令(2006/42/EC)には適用までの猶予期間があったので,整合規格に関してもそれまで通りISO13849-1の旧版に適合していればよかった。しかし,とうとう猶予の期限である2009年12月末がすぐそこまで近づいてきた。

〔以下,日経ものづくり2009年11月号に掲載〕