テレビなどの組み込み機器分野に,半導体業界の巨人が満を持して乗り込んでくる。最先端技術をつぎ込んだSoCを,次々に投入していく計画を打ち出したのだ。パソコン市場の成長が期待できない中,Intel社は並々ならぬ意欲でSoC事業に注力する。

 世界最大の半導体メーカーが,満を持してAV機器などのメイン・プロセサの市場に乗り込む。米Intel Corp.が,テレビやBlu-rayレコーダー,セットトップ・ボックス(STB)などの据置型AV機器,ルータなどのネットワーク機器といったさまざまな用途に向けたSoC(system on a chip)の事業を本格化させる方針を打ち出した。

 Intel社はこれまで,パソコンやサーバー機に向けたマイクロプロセサを事業の機軸としてきた。その戦略を大きく転換し,SoC事業を今後の成長エンジンに据える。「5年程度で,SoCの出荷量が汎用マイクロプロセサの出荷量を超えることは想像に難くない」(同社 President and CEOのPaul Otellini氏)。

 多くの半導体メーカーが先端製造技術の開発費高騰にあえぐ中,Intel社の積極策は異質なものに映る。パソコン向けマイクロプロセサの製造で導入した最先端の製造技術をSoCにも適用し,さまざまな製品分野に向けて矢継ぎ早に投入していくというのだ。圧倒的な資金力を持つIntel社がパソコン向けマイクロプロセサの文化をSoCに持ち込むことで,デジタル民生機器の分野に大きな地殻変動が起ころうとしている。

『日経エレクトロニクス』2009年11月2日号より一部掲載

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