高トルク/低回転数向きと低トルク/高回転数向き──必要に応じて特性を切り替えて使える直接駆動(DD)モータを開発したのが,日立アプライアンスと東芝ホームアプライアンスである。両社は,2009年秋発売のドラム式洗濯乾燥機の新製品に,そうしたDDモータを相次ぎ採用した(図)。

 これらのDDモータはドラムを回転させるためのもので,ドラムの裏側に配されている。近年のドラムの高速化によって同モータに投入する電力が増大してきたことから,その省エネルギ化が求められるようになってきていた。

 ドラム式洗濯乾燥機では,洗濯時にはドラム内のぬれた衣類をドラムの回転によって持ち上げなければならないため,高いトルクが必要になる。一方,脱水時は衣類にあまり水が含まれていないので大きなトルクは必要ないが,衣類から水分を十分に吹き飛ばせるように回転数を上げなければならない。

 東芝ホームアプライアンスによれば「洗濯時に必要なトルクは脱水時の約6倍,脱水時に必要な回転数は洗濯時の約30倍」。1台2役とDDモータの特性を状況に応じて適正化することで,東芝ホームアプライアンスの場合はDDモータの消費電力を約16%低減できたとしている。

〔以下,日経ものづくり2009年11月号に掲載〕

図●2009年秋発売の日立アプライアンスと東芝ホームアプライアンスのドラム式洗濯乾燥機
(a)が日立アプライアンスの「ヒートリサイクル 風アイロン ビッグドラム」,(b)が東芝ホームアプライアンスの「ヒートポンプドラム ZABOON」。いずれもドラムを回転させる直接駆動(DD)モータとして,洗濯時と脱水時で特性を変えられるものを開発し,採用している。ただし,ヒートリサイクル風アイロン ビッグドラムでは「BD-V3200」「同V2200」に限定しての搭載となっている。