中国や台湾の新興メーカーの参入で,実務で幅広く使える100MHz以上の周波数帯域を備えつつ,20万円未満の安価なオシロスコープ製品が充実してきた。実機を借りて調べたところ,基本的な特性では,メーカー間で大きな差はない。デジタル信号の波形観察に利用するならほとんどの機種が問題ない。カタログに表れない性能の差が出やすいのは主にアナログ信号の測定時である。

低価格デジタル・オシロスコープとは

 1MHz当たり1万円といわれたのも今は昔─。エレクトロニクス技術者が実務で使えるデジタル・オシロスコープが10万~25万円と,手ごろな価格で入手できるようになってきた。周波数帯域100M~300MHzの製品であれば組み込みソフトウエアのデバッグから機械制御信号,ビデオ信号の測定まで,さまざまな用途に使える。生産ラインでの合否判定やフィールド・エンジニアの携帯用,本格的な設計・開発の現場でも用途を選べば活用できるだろう。実売価格が20万円を下回る製品なら固定資産にならないので,企業が部門の予算で購入しやすいという利点もある。

 オシロスコープが低価格化した背景にはデジタル化がある。従来は高度なアナログ設計のノウハウが必要だったオシロスコープが,汎用部品の組み合わせで開発可能になったことが大きい。

新興メーカー品は1割安い

 こうした低価格デジタル・オシロスコープ(以下,低価格オシロスコープ)の市場を牽引するのが,中国などの新興計測器メーカーである。中国Rigol Technologies Inc.(北京普源精電科技)や台湾Good Will Instrument Co., Ltd.(固緯電子實業股分,以下GW社)などである。オシロスコープ業界の2大メーカー,米Agilent Technologies Inc.や米Tektronix, Inc.の同等製品に比べて,約1割(1万~2万円)安い価格を提示して,市場で存在感を増している。

 計測器の経験が浅いメーカーが開発したオシロスコープも登場している。格安ブランドとして名をはせている「OWON」である。中小型の液晶ディスプレイや小型テレビなどを扱う中国Lilliput Electronics Co., Ltd.(利利普電子)が製造する。同社の製品は,Rigol社やGW社といった計測器専業メーカーよりさらに安い。例えば,周波数帯域100MHz品は 11万8000円で販売されている。

『日経エレクトロニクス』2009年10月19日号より一部掲載

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