雑誌 特集

スマートグリッドON!

─蓄電池とセンサが創る次世代電力網─

狩集 浩志,清水 直茂,野澤 哲生,Phil Keys=日経エレクトロニクス
2009/10/15 16:00
 

第1部<総論>
再生可能エネルギーの拡大が
電力網に変革を迫る

世界のあらゆる地域で,温室効果ガスの大幅削減に向けた取り組みが進んでいる。その際には,風力や太陽光といった再生可能エネルギーの大量導入が不可欠だ。実現のカギを握るのが,蓄電池とセンサ制御を駆使した次世代電力網の構築である。

再生可能エネルギーの導入が拡大

 「あと10年で,再生可能エネルギーの導入量を,現状の2.5倍まで引き上げる」(米国カリフォルニア州知事のArnold Schwarzenegger氏)。

 世界は今,風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーを,大規模に導入する話題で持ち切りだ。温室効果ガス排出量の削減と,化石燃料依存からの脱却が,急務の課題となっているためである。

 米国は2025年までに,全電力供給量の1/4を再生可能エネルギー由来に転換する。欧州も2020年までに,すべての電力消費量のうちの1/5を,再生可能エネルギーで賄う計画だ。

 しかし,その目標値の実現には,難題が待ち受けている。再生可能エネルギーの発電量が,気象条件によって大きく変動することだ。例えば,風が吹かなければ,風力発電のプロペラは回らない。そして日が照らなければ,太陽光発電も力を発揮できない。天候に左右されず出力を自在に制御できる火力発電などと比較して,圧倒的に扱いにくいのだ。

 もちろん導入量が小さければ,出力の変動を吸収できる。しかし,多くの国で目標とされている20~30%という高率を実現しようとすると,現状の電力網(電力系統)では持たない。電力の周波数変動を招き,停電や電力品質の低下など,さまざまな障害を引き起こしてしまう。

 この課題を解決しなければ,再生可能エネルギーの導入計画は,「絵に描いた餅」で終わってしまうのだ。

蓄電池とセンサで電力網を救う

 変動しやすい再生可能エネルギーの大量導入。この課題解決の有効策が,蓄電池の導入と,センサ制御の積極活用である。

 風力発電や太陽光発電の出力を,蓄電地をバッファとして安定化させる。そして一般住宅や事業所/工場など需要側の電力要求(負荷)を,ネットワーク接続したセンサで監視・制御(負荷制御)する。発電側と負荷側を最適制御することで,周波数などの電力品質の安定化を図る狙いだ。

 こうした高機能の処理が可能な次世代の電力網(いわゆるスマートグリッド)への取り組みが,世界中の電力事業者や電力関連メーカーの間で,急速に進んでいるのである。

『日経エレクトロニクス』2009年10月19日号より一部掲載

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第2部<成功の条件>
米国市場の獲得目指し
多数の企業が覇権を競う

巨大市場に成長することを見越して,多種多様な業界から企業が参入し始めた。先行する米国市場で主導権を握るのは,送配電網と情報通信網を構築できる企業だ。一方,日本では要素技術を核に,電力網変革への機運が高まり始めた。

多くの企業がスマートグリッドになだれ込む

 「かかわる企業や団体数が多すぎて,把握しきれない」─。

 日本のあるシンクタンクで,「スマートグリッド」関連のレポートを作成中の担当者が悲鳴を上げる。何しろ関連業界が多岐にわたるのだ。電力やガスなどエネルギー関連企業はもとより,電機や自動車,住宅,建設,通信,ソフトウエア,半導体,電池など数多くの業界の企業が,スマートグリッド分野への取り組みを喧伝している状況にある。

 これら多くの企業が最初の大市場として期待しているのが,米国である。米国市場のスマートグリッド関連分野への投資金額は135兆円にまで膨らむという試算があるほど,巨大と見込まれているからだ。

 米国市場に注目が集まる理由は,その潜在的な市場規模の大きさだけではない。先行市場である米国で,事実上の業界標準を勝ち取った企業は,その後に待ち構える世界市場でのビジネス展開を有利に進めやすくなるためだ。「米国内のプロジェクトで開発したシステムや経験を持って,アジアの新興国などに向けて事業展開を狙う企業が多い」(マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパンの鈴木栄氏)。こうした狙いから,米国市場での主導権争いが,早くも過熱している状況にある。


『日経エレクトロニクス』2009年10月19日号より一部掲載

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第3部<アーキテクチャ>
対策の軸は蓄電池
どこにどれだけ置くべきか

電力網のベスト・ミックスにおける主役は蓄電池。「見える化」など通信技術との最適な組み合わせの先に,次世代電力網の青写真が見えてくる。

再生可能エネルギー導入には課題が山積

 全国の電力事業者の業界団体である電気事業連合会(電事連)は「既存の電力系統に連携できる太陽光発電の総出力は,全国で10GWが限界」と2008年9月に発表した。これは,全国の電力網の最大出力値である約180GWのうち,わずか約6%にすぎない。

 これまで電力会社は電力網の出力の過不足や周波数変動を発生させないことを第一に,電力源を構成してきた。いわゆる「最適電源構成」,または「電力のベスト・ミックス」である。現時点で調和が取れているこの構成に,「黒船」のように,出力が不安定な太陽光発電などが大量に導入されることになったのである。

 この黒船への対処法は大きく二つに分かれる。一つは,蓄電池などを用いて太陽光発電の出力の変動を電力網に連携させる前に平準化してしまう方法。もう一つは,通信技術などによる「見える化」を徹底させ,出力変動に合わせて他の電力源の出力や電力需要を,リアルタイムに追随させる方法である。

『日経エレクトロニクス』2009年10月19日号より一部掲載

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