1980年代に軽自動車向けで登場した電動パワーステアリング。現在では、コラム式、ピニオン式、ラック式という3方式に加え、油圧ポンプをモータで駆動する電動油圧式が使われている。EPSの世界シェアで40%強を握るジェイテクトに将来の方向を聞いた。

 パワーステアリングは米GM社の1954年型「キャデラック」が初めて採用した。これはエンジンで駆動する油圧ポンプの圧力を利用する油圧式だったが、現在はモータを使って必要に応じて操舵力を補助する電動パワーステアリング(EPS)が主流だ。EPSは小排気量車のポンプ駆動損失を少なくするために開発された。1988年に軽自動車向けEPSとしてジェイテクトが実用化したのが、コラム部分にモータやトルクセンサ、減速機を組み込んだコラム式EPS。ECU(電子制御ユニット)が操舵トルクと車速信号に応じて適切にアシストするようにモータを制御。この力は入力軸、出力軸を介してラックに伝わる。コストで有利なため小型車では最も普及している(図)。
 コラム式EPSは、ECUやモータを車室内に置くことで防水性を確保しやすく、エンジンからの熱の影響も少ない。しかし、ステアリング近くにアシスト機構があるため、操舵感や音、衝突安全構造の考え方の違いで欧州車では採用例が少ない。一方、ピニオンの脇にモータを搭載するピニオン式は、モータの使用条件は厳しいが、操舵感や静音性に優れる。ラック推力はいずれもDCブラシレスモータの採用や昇圧技術で10kNを実現した。

以下,『日経Automotive Technology』2009年11月号に掲載
図 コラム式EPSの構造
ステアリングコラムにモータを配置し入力軸をアシストする。小型車では最も普及しているタイプとなる。