瞬時にエンジンを止めて、静かに、素早く、再始動する新世代のアイドリングストップ機構が登場し始めた。スタータを改良した方式、スタータ兼オルタネータを使う方式などだ。燃費向上を突き詰めていくにしたがって、“止める”から“回生する”システムに向かう。次世代のアイドリングストップ機構に向けて本命はどの方式なのか。

 温室効果ガスの排出量削減を目指す「チーム・マイナス6%」のWebサイトにはこう書いてある。「10分間のアイドリング(ニュートラルレンジ、エアコンオフ)で、130cc程度の燃料を浪費します」。
 この値を使って、燃費10km/Lのクルマで走るとしよう。20kmの距離を1回も止まらずに走ったら、ガソリンを2L消費する。ここで、渋滞や信号などで10分間停止した場合、2.13Lとなって燃費は約7%悪化する。停止時間が長くなればなるほどアイドリングストップは有効だ。
 だが、これまでアイドリングストップ機構の採用は一部の車種にとどまっていた。頻繁な停止、始動を繰り返すだけの信頼性を備えたスタータモータ、耐久性の高い電池を搭載することでコストが上がってしまうからだ。
 こうした状況を覆しつつあるのが、各国におけるCO2排出量に基づく税制および低排出車に奨励金を与える制度の導入、それに新しい技術によって従来の欠点を解消したアイドリングストップ機構の登場である。
 優遇税制や奨励金を使えば、アイドリングストップ機構の搭載で価格が上がったとしても支払い総額から割り引かれ、実質的なユーザーの負担は増えない。しかも、燃費は通常のクルマを上回るのでランニングコストの分だけ得だ。また、より低コストで始動性などを向上させた方式も実用化されつつある。
 進んでいるのが欧州。ドイツBMW社やDaimler社、Volkswagen社、フランスCitroen社などは手動変速機(MT)モデルを中心に複数車種に搭載、日系メーカーもマツダが新型「アクセラ」のMTモデルで「i-stop」と呼ぶ同機構を設定した(図1)。トヨタもラインアップを拡充しており、欧州で排気量1.33Lの新型エンジン「1NR-FE」の導入に合わせて、「オーリス」「iQ」「Yaris(日本名ヴィッツ)」「カローラ」「Urban Cruiser(イスト)」の5車種に設定する力の入れ様(図2)。

以下,『日経Automotive Technology』2009年11月号に掲載
図1 マツダの「アクセラ」
排気量2.0Lの「MZR」エンジンにアイドリングストップ機構を加え、欧州ではCO2排出量159g/kmを達成。
図2 トヨタ自動車の「オーリス」
排気量1.33Lの「1NR-FE」エンジンと組み合わせて、欧州では135g/kmと140g/kmを切っている。