自民党政権から民主党政権へ──。政権交代によって,製造業に突き付けられた課題は重い。本誌は,民主党が政権公約(マニフェスト)に掲げた,(1)製造現場への派遣を原則禁止するなど,派遣労働者の雇用の安定を図る(2)地球温暖化対策を強力に推進する──という二つの政策について,製造業への影響を検証した。

 製造業派遣が解禁された2004年春。トヨタ自動車は,国内工場で約1000人に及ぶ派遣労働者の受け入れを発表した。「生産変動に柔軟に対応していくため」というのが,その理由だった。

 同社に限らず,必要な人材を必要なときに必要な人数だけ迅速かつ確実に確保できる派遣は,生産変動の影響を吸収する「調整機能」を担ってきた。企業から見れば,繁忙期には採用を増やせるし,閑散期には採用を減らせる。一方,労働者から見れば,閑散期の業界から繁忙期の業界へと職場は転々と変わるものの,雇用は維持される。製造業派遣という制度は,企業と労働者の双方が利益を享受する形で日本の製造業の生産活動を支えてきたのである。

 それを禁止するということは,企業から見れば生産変動に対する調整機能の喪失にほかならない。この厳しい国際競争の中で,正社員だけで構成する硬直的な生産体制を維持するのは至難の業。派遣に代わる新たな調整機能を用意する必要がある。その選択肢は二つ。請負,あるいは期間従業員(有期契約社員)だ(図)。

〔以下,日経ものづくり2009年10月号に掲載〕

図●請負と期間従業員のメリット/デメリット
日本生産技能労務協会の資料を基に本誌作成。