IBM社が突如,Liイオン2次電池を超える次世代電池を開発すると発表した。2009年8月末には,同社の研究所に電池関連や自動車関連の研究者を世界中から招き,ポストLiイオン2次電池を標榜した講演会を開催した。米国政府は,蓄電技術が電動車両や再生可能エネルギーの導入拡大のカギを握ることから2次電池の製造拠点を米国内に立ち上げようと多額の融資を開始した。さらにこの分野でリードするため,IBM社など数多くの米国企業が動きだしている。

IBM社がポストLiイオン2次電池を研究開発へ

 「あの米IBM Corp.が,なぜ電池を手掛けるのか」「Li空気電池をめぐる米国の動向が知りたい」─。IBM社の研究所であるAlmaden Research Centerは,「Scalable Energy Storage:Beyond Lithium Ion」と題し,日米欧の電池研究者や自動車関連の技術者などによる講演会「Almaden Institute 2009」を2009年8月26~27日に米国で開催した。会場には世界各地から300人近い聴講者が集まった。電池メーカーや材料メーカーのみならず,大手自動車メーカーなどがIBM社の狙いを探ろうとはせ参じた格好だ。

 IT業界の大手であるIBM社は,2009年6月末に突如,電池分野を今後の重要テーマとして研究開発を積極的に進めるとの方針を表明し,電池業界関係者の度肝を抜いた。その発表後,わずか2カ月で講演会を独自開催し,日米欧から電池研究者を招致するとともに,多くの聴講者を集めることで人脈を築こうとするIBM社の積極的な姿勢がうかがえた。

 両政策共に,その実現に向けて技術的な根幹となるのが蓄電装置である。現在,Liイオン2次電池の適用を目指しているが,より高性能な蓄電装置への需要が高まることをにらみ,IBM社をはじめ多くの企業が,現状の性能を超えるポストLiイオン電池の開発に積極的に乗りだしている。

『日経エレクトロニクス』2009年10月5日号より一部掲載

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