富士フイルムはエグゼモード以上に安価な部品を活用

 「富士フイルムは2009年9月ごろ,カメラ事業から撤退する」。こうした噂を完全に打ち消したヒット商品が,今回分解した同社の「A170」である。 89米ドル前後で2009年7月に発売されて以降,時には供給が不足するほどの状況だ。これに自信を持った富士フイルムのカメラ部門長は,2009年度の公式の販売台数目標を830万台に据え置きつつも「900万台超えは確実,ここまでくれば1000万台は目指したい」とした。しかも,「A170はきちんと利益が出る」(同社)という。この理由を,カメラ関係の企画,価格調査,回路/ソフトウエア開発を担う人々の協力を得て探った。

Altek社に思い切って任せる

 A170で利益が出る最大の理由は,富士フイルムが「新興国市場向け」という大義名分の下でほとんどの設計と製造を,受託メーカー(EMS/ODM)に任せたことだろう注1)。分解と,『日経ビジネス』(同誌2009年9月21日号に関連記事)の取材から,富士フイルムは日系メーカーとしては異例なほど設計・製造にかかわらなかったことが分かった。自ら手掛けたのは,内蔵ソフトウエアによって画像の彩度や精細感を高めたこと,レンズの品質検査を厳密にした上でフジノン・ブランドを付けたこと,レンズを取り囲む外装の一部にメッキのように見える表面加工を施したこと,などにとどまる。/p>

 代わってA170の大半の開発を担当したのが,最近勢いを増しているEMS/ODMの台湾Altek Corp.(華晶)である。同社は2008年,三洋電機と台湾Hon Hai Precision Industry Co., Ltd.(鴻海)を抜き去り,カメラの年間生産台数でEMS/ODMのトップに躍り出た。内製分を含めた生産台数ランキングではキヤノン,ソニーに続く世界3位。部品購買力がこれに応じて高まっているわけだ。

 Altek社は,台湾系EMS/ODMとしては珍しく自社専用のASICを利用している。高感度撮影といったトレンドに素早く応えつつ,量産効果を背景にASICのコストを最安級のASSP並みにしていると評される。

『日経エレクトロニクス』2009年9月21日号より一部掲載

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