業務用体感ゲーム機「機動戦士ガンダム 戦場の絆」は,2006年11月の本格的な稼働から約3年経過しても高い人気を保ち続ける異例の製品だ。この製品がいかにして生まれたか。その開発経緯を紐解く。話は約10年前までさかのぼる。

 ゲームセンターやアミューズメント・パークなどに設置される業務用(アーケード)ゲームの中で,ユーザーから絶大な支持を受けている体感ゲーム機がある。バンダイナムコゲームスが開発した「機動戦士ガンダム 戦場の絆」(以下,戦場の絆)である。

 その名の通り,1979年に放映が始まったテレビ・アニメ「機動戦士ガンダム」を題材にしている。「P.O.D」と呼ぶコックピットのような巨大なドーム型筐体に乗り込み,筐体内の球面スクリーンに映し出された映像を見ながら,人型兵器「モビルスーツ(MS)」を操縦して遊ぶ。P.O.Dは他のP.O.D と通信可能で,プレーヤーは「地球連邦軍」と「ジオン軍」の2チームに分かれ,仲間と協力しながら戦い,お互いのスコアを競い合う。

 戦場の絆は,ここ数年停滞気味のアーケード・ゲーム市場にあって,2006年11月の本格的な稼働以来,異例のヒットになった。1セット(P.O.D4台とカード・システム用機器など)で約1400万円という高価な商品ながら,登場から3年で約1000セット以上が全国のゲームセンターなどに販売された。

 戦場の絆は,開発当初に練り上げた目標を忠実に守り続けて作られた。この実現を技術面で手助けしたのは,旧ナムコが開発し,社内で「塩漬け」状態になっていた,ドーム型ゲーム機「O.R.B.S」だ。O.R.B.Sで導入された技術や開発経験などの再利用が,ドーム型筐体P.O.D,そして戦場の絆の成功につながったのである。

 すべての始まりは今から約10年前。O.R.B.Sの開発が始まる1999年春にさかのぼる─。

『日経エレクトロニクス』2009年9月21日号より一部掲載

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