電子書籍市場が急速に動き始めた。その市場規模は,急拡大を遂げるという予測が相次いでいる。「音楽」「動画」に続き,エレクトロニクス業界で一大市場を築く可能性が出てきた。風雲急を告げる電子書籍市場の行方について,同市場にかかわる企業トップによる緊急対談を実施した。

急速に動き始めた電子書籍市場

 電子書籍市場に関連するニュースが後を絶たない。本誌が2009年6月29日号に,特集「電子書籍 メジャーへのページをひらく」を掲載した後も,さまざまな動きが目白押しだ

 例えば,この市場をリードする米Amazon.com,Inc.は2009年7月,電子書籍端末「Kindle 2」の価格を359米ドルから299米ドルに値下げして,さらなる攻勢をかけた。

 一方,Amazon.com社の後を追うソニーも,新機種の投入で抗戦する。2009年8月には199米ドルと低価格の電子書籍端末を発売。さらに,同年12月にKindle同様に3G通信機能を備える電子書籍端末を発売する。

 この2陣営に,米国最大手書店のBarnes & Noble社が割って入ってきた。2009年7月に,ついに電子書籍ストアをオープン。2010年初頭には,米Plastic Logic社が発売予定の,薄く軽い電子書籍端末を,この書籍ストアに対応させる。

 米国のIT企業も,この市場を静観しているわけではない。Google Inc.は2009年末に電子書籍販売サービスを始め,Apple Inc.は同年内にも電子書籍をターゲットの一つとしたタブレット・パソコンを発売するとウワサされている。

 こうした米国を中心とする動きに呼応するかのように,国内でもさまざまな動きが見え隠れし始めた。

 そこで今回,電子書籍市場に直接かかわりを持つ企業のトップ5人に集まっていただき,電子書籍市場の行方について緊急対談を実施した。対談の進行は,電子ペーパーの開発を手掛ける米E Ink Corp.で,数カ月前まで副社長を務めていた桑田良輔氏にお願いした。

 桑田氏以外のメンバーは,Kindle向けに無線通信チップセットを提供しているクアルコムジャパンの山田純氏,電子書籍コンテンツの販売などを手掛けるイーブック イニシアティブジャパンの鈴木雄介氏,電子書籍コンテンツのフォーマット変換や,欧州の電子書籍端末の技術・販売支援などに携わるイーストの下川和男氏,電子書籍用のアプリケーションやフォーマットなどを開発するボイジャーの萩野正昭氏である。

『日経エレクトロニクス』2009年9月21日号より一部掲載

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