雑誌 特集

LED照明,戦国時代

吉田 勝=日経エレクトロニクス
2009/09/16 16:00
 

戦いの幕は上がった

 2009年に入って,LED照明市場の盛り上がりが著しい。環境負荷に対する世間の関心が高まっているのに加えて,LEDの性能向上や低コスト化の進展で「LEDが主照明」という時代が現実味を帯びてきたからだ。実際,大手照明メーカーからも,「2012年ごろには蛍光灯と競う照明になるだろう」との声が聞かれるようになった。

 その本格的な普及期を目前に控えて,古参の照明メーカーは続々と新製品を投入している。ただし,LED照明市場を狙っているのは古参メーカーだけではない。市場の拡大を商機とみた異業種の企業が次々と新規参入し,新製品を投入しているのだ。

 新規参入組は,培ってきたLED技術で勝負するメーカーもあれば,新市場に食い込むべく古参メーカーの手掛けない製品を展開する企業もある。新しいコンセプトで時代を先取りしようとの動きも見られる。彼らはこれまで古参メーカーの牙城だった照明市場に取り付こうと攻勢を強めている。新興勢力ともいうべき後発企業の動きは侮れない。例えばLED電球は,シャープが低価格品を発売したことで,一気に価格の下落が進んだ。加えて,海外メーカーも虎視眈々と日本市場を狙っている。

 これに対し古参メーカーは,充実した商品群や施工業者などとの太い商流を武器に,新興勢力や海外勢を迎え撃つ。新旧メーカーが群雄割拠し,激しい攻防を繰り広げようとしているLED照明市場。まさに戦国時代を迎えたといえる。

第1部<市場動向編>
低価格製品の衝撃
新旧入り乱れて競争激化

環境対策の一つとして,LED照明への注目度が高まっている。性能向上で蛍光灯に代わる主照明との見方も現実味を帯びてきた。異業種からの参入も相次ぎ,新市場を巡って新旧メーカー入り乱れての攻防が始まった。

急激に低価格化したLED電球

 「コスト面では,かなり無理をしている。価格下落は年率10~20%程度との見込みで,半額になるのは2~3年先との予想だったのだが」(東芝ライテック LED部 LED企画部部長の佐藤光治氏)─。2009年7月,照明業界で古参メーカーの東芝ライテックは,性能向上を図った電球型LED照明の新製品を従来の約半額で発売した。白熱電球に類似した形状のLED照明は,同年3月に発売したばかり。だが,シャープが競合製品を低価格で投入したのに対抗せざるを得なかったのだ。

シャープ・ショック

 東芝ライテックが「E-CORE」シリーズとして,口金E26に対応するレフランプ・ミゼット型のLED電球を発売したのは,2007年12月。当時は40W相当品のみだったが,2008年8月には60W相当品を発売した。ただし,いずれも電源回路の収納や放熱面積確保のために筐体が大きく,取り付けられる器具は限られていた。

 それから半年余り後の2009年3月に世に送り出したのが,40W相当の電球型LED照明である。希望小売価格1万500円,実売価格8000円前後だった。白熱電球と同等の大きさと明るさの同製品は,暗かったり取り付け器具が限られたりする既存のLED電球とは一線を画していた。

 そこに低価格で攻め込んできたのがシャープである。2008年にLED照明市場に参入したばかりの同社は,2009年6月に実売想定価格4000円前後の電球型LED照明を発表した。既存製品の半分という思い切った価格設定に,業界には衝撃が走った。対抗上,東芝ライテックは,その直後に発表した60W相当品の希望小売価格を5000円前後(実売価格4000円前後)にせざるを得なくなった。性能は向上しているのに,わずか4カ月で価格は半減したのだ。

 こうした動きに他社も素早く反応した。2009年4月に電球型LED市場に参入したばかりのエコリカは発売から3カ月で7200円から3780円へと値下げし,アイリスオーヤマは実売想定価格が3980円からという製品を投入。2009年8月にLED電球を発表したNECライティングも,「市場価格は競合製品と同等」(同社 広報部)としている。業界最大手のパナソニックも10月に同価格帯のLED電球を発売する。

 シャープが思い切った値付けに踏み切ったのには,安価な製品を投入して,LED照明市場にいち早く橋頭堡を築こうという狙いがある。「後発として戦略的な価格にした。LED電球の寿命は白熱電球の寿命1000時間の40倍なので,40倍の価格が妥当」(同社)。ただし,「これが現在の精いっぱいの値付け。この価格が今後数カ月でさらに下がるとは考えにくい」(同社)と,利益よりもまずはシェア確保を優先した価格設定のようだ。

『日経エレクトロニクス』2009年9月21日号より一部掲載

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第2部<技術編>
より明るく,より安く
放熱やチップ構造にひと工夫

「値段が高い」「暗い」─。依然としてこの二つがLED照明の2大課題だ。コストダウンと発光効率の向上に,各メーカーは工夫を重ねている。

低コスト化と効率向上が2大課題

 「初期導入コストの償却に3年かかると言うと,LED照明の採用を検討している企業も及び腰になる」(LED照明メーカー)。今のところLED照明の価格は,既存照明の数倍~数十倍にもなる。企業はもちろん,ましてや一般消費者が購入するには敷居が高い。コストに大きく影響しているのは,基幹部品である LEDチップ/パッケージの価格であるのは言うまでもない。だが,電源や筐体などの周辺部品でのコスト削減対策も欠かせない。

 一方,明るさという面でも,第1部で述べたように,総合効率でまだ高周波点灯(HF)型蛍光灯には及ばない。もちろんLEDチップのメーカーは,チップやパッケージの構造,材料に工夫を凝らして発光効率の改善を図っている。発光効率の向上は,パッケージの実装コストの削減や発熱量の減少にもつながる。また,パッケージの発光効率もさることながら,放熱性能も重要な因子である。LEDパッケージの熱をうまく逃がして温度を抑えられれば,同じチップ/パッケージを使っていても寿命を延ばせるし,発光効率も高まる。

シンプルに安く

 LED照明の普及を阻む最大の障害は,価格にあるといってよい。特に,電球型LED照明のように家電量販店の店頭に並んで一般消費者にも販売される製品には,厳しいコスト削減が要求される。東芝ライテックの電球型LED照明で,どのようにコストダウンを図っているかを見てみよう。

同社の製品は,Alダイカスト製の筐体の上面にLEDパッケージを実装したメタルベース基板を配置し,その上部に光を拡散させるためのアクリル製のドームを設けている。筐体内には,電源回路基板を収めた樹脂ケースを内蔵する。筐体の外側には,LEDパッケージや電源の熱を筐体から逃がすためのフィンを16枚設けている。

 筐体の形状に新旧で大きな変更はないが,新製品は塗装がなくAlの地のままであること,装飾用リングがなくなっていることが一見して分かる。いずれもコスト削減策の一環である。

 筐体内部を見ると,電源回路が大きく異なる。旧製品は樹脂ケース内の電源回路基板の裏側を充填剤で満たしていたが,新製品は基板が大きい上に充填剤がない。「旧製品は電源の小型化に苦心したが,回路を見直して簡素化した」(東芝ライテック LED部 LED企画部部長の佐藤光治氏)。メタルベース基板と接する面を薄肉化して電源が入る空間を拡大した分,大きいけれども安価な構成にしたという。電源基板の材質をガラス・エポキシ樹脂から紙フェノールに変更しているのも,コスト削減のため。筐体を薄肉化したことで,材料コストもわずかに削減できているという。

 LEDパッケージは新旧どちらの製品も日亜化学工業製だが,旧製品は6個のチップを並列接続したパッケージなのに対して,新製品は3個を直列接続したものに変更している。これによって電源の電流値が小さくなり電源からの発熱量が減ったため,電源の熱を筐体に伝えるための充填材が不要になったとする。

『日経エレクトロニクス』2009年9月21日号より一部掲載

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