ARが家電を飲み込む
- プロジェクター内蔵デジカメ,ニコンがモジュールも自社開発
内部構造の見直しと入念な熱対策で実現 - 3D映像に「触れる」技術が登場,超音波のレンズで手を追跡
ARでも触覚フィードバックが可能に - デンソー,デジタル家電向けに時間分解能型A-D変換器を開発
車載用センサで培った技術を応用 - 究極の省エネに向け,「ユーザーに物申すエアコン」登場
三菱電機の新製品,赤外線センサなどで判定/ - モバイル用インタフェース「MHL」,トロイの木馬方式で導入狙う
Silicon Image社が描く普及のシナリオ
アナログ強化塾 第9回
0.4V動作の昇圧型コンバータ,単セル太陽電池を有効活用可能に
プロマネ力+コミュニケーション力養成講座 第5回“対立”を“合意”に導く,ネゴシエーションの手法
- モバイル:メーカーが「MVNO」に,日本通信が仕掛けるケータイ新時代
- ディスプレイ:中小型パネルで再編が加速,国内メーカーは高精細化へシフト
- 医療エレ:ケータイを“健康情報の出入り口”に,次世代ヘルスケア市場の主役に名乗り
ARという技術をご存じでしょうか。ARとはaugmented realityの略で,日本語では拡張現実感と訳されます。我々が実際に見たり聞いたり触ったりする情報に,コンピュータで加工処理した情報をリアルタイムに重ね合わせ,人間の感覚を拡張または強化したり,作業を支援したりする技術です。1990年代前半に生まれ,映画やテレビでは既によく使われています。例えば,スタジオにいる人が,あたかも大自然の中にいるかのように見えるといったシーンです。
近い将来,ARは我々の日常生活にも入り込んでくることでしょう。道路にカーナビのルート案内が表示される,服の試着を実際に服を着ることなく鏡の前で可能になるというような感じです。こうしたことが実現できるようになる背景には,画像処理関連のアルゴリズムが洗練され,必要とする演算量が減ってきたこと,そしてマイクロプロセサやグラフィックス処理LSIの性能が高まってきたことがあります。
そしてARの技術は,将来的に家電を変えていく可能性もあります。家電にARが使われる当初は,製品の取り扱い説明書の代わりなど,付加的な情報を提供するものになるでしょう。ただ,ARが便利になればなるほど,重ね合わせる情報の基になる現実の情報の重要性が低下し,家電のインタフェースとしてのハードウエアの役割が縮小する。極端な言い方をすると,ハードウエアとしての家電の“ハコ”は,なくなってしまうのではないか――。こういった視点から最新号の特集「ARが家電を飲み込む」をまとめました。
このほか最新号では,ベンチャー企業であるフリービットを例に,インターネット接続事業者や通信事業者が続々と家電事業に参入する狙いやビジネスモデルの造り方などを探った解説「参入者続々のWeb家電,新たな垂直統合目指す」,LSI設計やEDA分野で世界最大の国際学会・展示会である「DAC」での注目トピックスを取り上げた解説「DAC 2009に見る車載系やマルチコア設計」,日産自動車による寄稿「電気自動車がモビリティー社会を変える」なども掲載しております。ぜひ,ご一読いただければ幸いです。
日経エレクトロニクス編集長 田野倉 保雄