世界中が100年に1度と言われる金融発の不況に陥り,日本のモノづくりも深刻な影響を受けた。今も先行き不安な状況だ。そのような中,経済産業省の委員として「ものづくり日本大賞」の選考にかかわった。候補はどれも世界一,世界唯一の素晴らしい技術であったが,あらためて気付いたのは,地道に積み重ねた材料や製造に関する技術が多いことだった。世界が必要とする環境技術,材料や加工,部品,インフラ技術…。この金融発の危機を乗り越えた先に,再び世界から日本のモノづくりが注目されるであろうことを実感した。

〔以下,日経ものづくり2009年9月号に掲載〕

鈴木一義(すずき・かずよし)
国立科学博物館 理工学研究部 科学技術史グループ グループ長
1957年新潟県生まれ。東京都立大学大学院工学研究科で材料力学専攻修士課程を修了。日本NCR技術開発部勤務を経て,1987年から国立科学博物館理工学研究部に所属。専門は,江戸時代から現代までの日本の科学/技術の発展史。