「やるぞ,やるぞ,やるぞー」と手を突き上げて叫ぶ「やるぞコール」。自分が掲げる目標を足腰が立たなくなるまで絶叫し続ける「実行宣言」。そして毎回,リタイア者が出るマラソン…。この「地獄の訓練」に今,まさに挑もうとしているのは,全国各地の工場に勤務する,約40人の女たちである。

山崎昌彦 PEC産業教育センターで副所長を務める。女性向けカイゼン研修の講師を担当して10数年。最後まで,あきらめずにこだわり続ける女性のカイゼンを,目の当たりにしてきた。写真:堀 勝志古

 東海道新幹線は岐阜羽島駅。そのロータリー前には,周囲とは少し趣を異にする4階建てのビルがある。2009年5月下旬の午後8時,その2階の窓から,電灯の明かりがぼんやりと漏れていた。

 このビルは,ソニーやキヤノンなどの工場でムダとりを指導したことで知られるコンサルタント,山田日登志が運営するPEC産業教育センターの研修施設である。日本各地のメーカーが社員を送り込み,「自ら知恵を出す力」を徹底的に叩き込んでもらう場所だ。 同センター副所長の山崎昌彦は,その施設の2階にある研修室で約40人の研修生たちと対峙していた。研修生たちの年齢や勤務先,従事している職務などはさまざまだが,共通していることがただ一つだけあった。「工場に勤務する女性」という点である。

 同センターでは,経営者/工場管理者向け,現場の班長向けなどさまざまなカイゼン研修を提供している。この日の研修は,女性の現場スタッフを対象としたもの。毎月1回,1泊2日のスケジュールで5カ月(全5回)にわたって実施する研修の初日だった。期間中のほとんどを全国各地の工場でのカイゼン活動に充てるが,第1回だけは同施設で,士気を高める訓練をするのが常だった。山崎は,女性向け研修の講師を担当して10数年になる。

「キョーツケー,礼!」
「よろしくお願いしまーす」

 号令とともに甲高い声が建物中に鳴り響いた。山崎は胸で大きく息を吸うと,これから始めようとしている研修の内容を大きな声で説明し始めた。

〔以下,日経ものづくり2009年9月号に掲載〕