怪談話を一つ。人魂を見たという話を聞いたことがある。ジイッと蒸し暑く,風のない夜のこと。背後に気配を感じたのでフッと振り返ると,青白く光る丸い玉がボウッと,ゆっくりと浮いて動いていたというのだ。光の玉は何かを語り掛けるかのように少し動いては止まり,また何かを話すように少し動き,そして,すうっと消えたのだという。ちょっと前に知り合いが亡くなり,その魂が人魂となって自分に話し掛けてきたのだと,その人は本気で信じている。
この人魂,人工的に作った学者もいたらしい。メタンガスを,ある条件で空中に放出して着火すると,ちょうど人魂のように見えたという。人魂は狐火とも鬼火ともいわれるが,本当に存在するのか,それは何なのか,実は分かっていない。
人魂とはひょっとして,何かのガスが燃えて,ボウッと光って見えているだけなのかもしれない。幽霊を見たという話も,ガスが燃えてわずかに揺らいで見えた光があたかも幽霊のように見えただけなのかも…。
さて,人魂の話からいきなり,今度は水素ガスの話に。水素ガスは無色・透明・無味・無臭であり,着火してもその火炎はほとんど肉眼で見ることができない。
この水素ガス,何となく人魂の話と似てはいないだろうか。人魂だと思っていたが,実は何かの作用で水素ガスが発生しただけだった──。だとしたら,怪談話も科学的な説明ができるというものだ。
いささかこじつけてしまったが,この水素ガスについて,ガスそのものに加え,火炎も見えるようにする技術を開発した会社がある。四国電力の研究子会社である四国総合研究所だ。
〔以下,日経ものづくり2009年9月号に掲載〕
システム・インテグレーション 代表取締役