「新人にも分かる 工場安全のツボ」は,生産現場における本質安全構築の基礎を学べるQ&A方式のコラムです。現場で悩むことの多い工場安全の疑問とその回答を通じて,真の工場安全を実現するために必要な考え方や手法を紹介していきます。

【Q1】市販の射出成形機を購入し,自社工場に導入・設置します。どのようにリスクアセスメントを行えばよいですか?

 機械のリスクアセスメントを行う際は,その機械固有の特徴を十分に把握しておかねばなりません。機械ごとに,機能や目的に応じた特有の作業があり,その作業に付随する危険源があります。それらをあらかじめ把握しておけば,リスクアセスメントの効果や効率が高まります。

 射出成形機は溶融した樹脂を高温・高圧で金型に流し込んで成形する機械なので,危険な部位や作業が多数あります。例えば,金型は高圧によって締められているので,そこに人が挟み込まれると致命傷を負いかねません。人が金型に接近する金型交換時や金型保守作業時は,特に注意が必要です。

 実際,厚生労働省が事業者から集計している労働者死傷病報告によれば,成形作業を行うプラスチック製品製造業における休業4日以上の死傷災害で最も多い原因は「挟まれ,巻き込まれ」(34.8%,2007年のデータ)でした。このように,機械特有の危険源による事故が多いという事実からも,それらを把握しておくことの重要性が分かります。

〔以下,日経ものづくり2009年9月号に掲載〕

西原一寛(にしはら・いっかん)
IDEC 規格安全ソリューションセンター
IDEC技術本部規格安全ソリューションセンター室長。各種検出制御機器・機械安全制御機器・防爆安全制御機器の製品開発および事業企画に従事。現在,安全関連の講演のほか,機械装置メーカー/ユーザーに対し,リスクアセスメント支援を行う。セーフティ・リードアセッサ資格を有する。
前田育男(まえだ・いくお)
IDEC 規格安全ソリューションセンター
機械,制御,安全,防爆などに関する国際規格,欧州・北米各国規格/規制に基づく製品認証関連業務やリスクアセスメント支援に従事。現在,制御・安全技術に関するIEC(国際電気標準会議)の委員をはじめ,ロボット技術,防爆技術,機能安全技術,半導体製造装置関連の標準化活動に携わる。セーフティ・リードアセッサ資格を有する。
関野芳雄(せきの・よしお)
IDEC 規格安全ソリューションセンター
安全制御設計技術者として多くの製品開発に携わり,現在は,グローバルに通用する本質安全設計/安全防護の考え方などの安全技術指導や安全システム設計に従事。ISOロボット安全規格作成の国際委員としての経験を基に,機械メーカー/ユーザーに対する各種リスクアセスメント支援を行う。セーフティ・リードアセッサ資格を有する。
岡田和也(おかだ・かずや)
IDEC 規格安全ソリューションセンター
安全機器,システム,ネットワークなど,安全制御設計技術者としての経験を有し,現在は,ロボット制御セル生産システムのリスクアセスメントや安全システム設計に従事。ISOロボット安全規格の国際委員会委員,安全応用研究会専門委員会委員などの規格関連委員を務める。セーフティ・リードアセッサ資格を有する。