台湾Taiwan Semiconductor Manufacturing Co., Ltd.(TSMC)は,不況の中でも研究開発投資を大幅に増やす。その狙いを,同社の研究開発責任者であるJack Sun氏に聞いた。(聞き手は本誌副編集長 大石 基之,木村 雅秀)

(写真:皆木 優子)

─景気の先行きが不透明な中,2009年の研究開発投資を増やすのはなぜでしょうか。

 理由は二つあります。一つは,研究開発によって生み出される技術力こそが我々の生命線だということです。我々は事業を支える三つの柱として,「技術力」「製造力」「顧客との良好な関係」を挙げており,技術力はとても重要な要素です。

 もう一つの理由は,景気低迷期にあえて投資することが,半導体事業の成功につながるということです。これまで半導体業界でリーダーといえる企業の多くは,景気低迷期に投資することで競合他社を引き離してきました。また,不況期に投資することは,景気回復期に顧客の要求に素早く応えるためにも重要と考えています。

─2009年の研究開発投資額を具体的に知りたいのですが。

 金額は公表していませんが,プロセスと設計向けの研究開発投資額を対前年比で20%増やします。これに伴い,プロセスと設計にかかわる研究開発者の数を1800人から30%増やす計画です。

 我々はプロセスと設計以外に生産技術の研究開発も進めていますが,こちらは業績に比例させる方針のため,2009年は若干減少します。その結果,プロセス,設計,生産の三つを合わせた研究開発投資額は,対前年比で横ばいか,若干増加するという水準になります。

『日経エレクトロニクス』2009年8月24日号より一部掲載

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