久井 信也
ソリューションサービス研究所
プロジェクトの関係者から,難題を持ち掛けられることはよくあります。そんなときはつい,「むちゃだ」「やりたくない」と考えてしまいがちです。しかし,相手の言い分とその背景,本音を聞き出せば相手の立場も理解でき,「こうすればできるのでは」という前向きの姿勢になってくるものです。そこで役立つのがヒアリング/インタビューとディスカッションのスキルです。今回は,プロジェクトを積極的に進めるために必要な手順や考え方を学んでいきます。(本誌)
良好なコミュニケーションは,出だしが肝心です。五つのコミュニケーション力のうち,まず「ヒアリング/インタビュー」のスキルを用いて話を聞き,対処すべき問題の背景や本質を引き出します。次に「ディスカッション」のスキルで質問や意見交換を行い,問題解決の方向について話し合います。今回は,それぞれの具体的な進め方を解説します。
<事例>前提条件変更による無理な納期
回路基板メーカーK社は,上得意先の通信機器メーカーC社の提案招請で,新製品開発プロジェクトに参加することになりました。K社では他の開発プロジェクトもいくつか進行していたのですが,C社の開発計画にそれほど無理はなく,K社にとっても積極的に取り組みたい案件でした。
K社の開発見積もり提案にC社が合意し,受注が決定しました。ところが,詳細設計を進める段階でC社は新製品開発プロジェクト全体を見直し,大幅な納期短縮案を提示してきました。K社には重要な他の開発プロジェクトがあり,納期変更に対応できる要員確保は難しい状況です。 K社の開発チームのプロジェクト・マネジャーは,C社の要請にどのように対応すべきでしょうか。