カー・エレクトロニクス技術に特化したイベント「AT International 2009」が2009年7月15~17日にパシフィコ横浜で開催された。今話題の電動車両に関する講演や展示が数多く用意されていたことから自動車業界が深刻な不況の中にあっても,3日間で2万人以上もの来場者が詰め掛けた。ハイブリッド車や電気自動車,そして電池やモータに関する講演は連日盛況で自動車業界が電動化に向けて大きく前進していることを感じられるイベントとなった。

電動車両向けの充電器が続々主催者企画

 「電気自動車はマスマーケットを狙わないと意味がない」─。2009年7月15~17日にパシフィコ横浜で開催された,カー・エレクトロニクス技術の展示会・専門フォーラムである「AT International 2009」において,日産自動車常務の篠原稔氏は,電気自動車を2012年以降に大量生産する意向を示した。

 同氏は初日の基調講演において,「クルマの電動化がもたらすもの」と題し,電気自動車に関する同社の取り組みと将来展望を語った。日産自動車では,化石燃料だけでなく,風力や太陽光などさまざまなエネルギー源から作り出せる電力の利点と,電池技術の発達により,電気自動車の普及が現実味を帯びてきたとする。1回の充電で160km以上の航続距離がある4~5人乗りの電気自動車を2009年8月に初披露し,2010年度に日米で発売する計画である。車体は電気自動車専用として新規開発する。

ハイブリッド車か電気自動車か

 今回のイベントは,電動車両に関する講演や展示が目白押しだった。基調講演では,電気自動車に大きくシフトする意向を初日に示した日産自動車に対して,2 日目には「ハイブリッド車の近未来を探る」と題し,トヨタ自動車 第2技術開発本部 HVシステム制御開発部長の阿部眞一氏と,本田技術研究所四輪開発センター LPL 主任研究員の関康成氏が登壇した。2009年に相次いで発売された新型「プリウス」と新型「インサイト」の開発者が相まみえた格好だ。両氏とも,将来的にはクルマの電動化がより一層進むとしたものの,電気自動車の2次電池はエネルギー密度が足りず,当分の間はハイブリッド車の時代が続くとの見解で一致した。

 ハイブリッド車を中心としながら電動化を徐々に進めようとするトヨタ自動車とホンダに対し,ハイブリッド車よりも電動化率が高い電気自動車をいち早く投入しようとする日産自動車や三菱自動車などの自動車メーカーが出てきたことで,クルマの電動化をめぐる開発競争が今後,より一層激化しそうだ。

 こうした中,展示会場には最新の電気自動車と,その普及のカギを握る充電器を一望できる場として「EV&充電インフラ展示ゾーン」が設けられた。三菱自動車と富士重工業,ゼロスポーツ,トヨタ車体,オートイーヴィジャパンの5社が電気自動車を,トヨタ自動車が家庭用電源で充電可能なプラグイン・ハイブリッド車を展示した。

『日経エレクトロニクス』2009年8月10日号より一部掲載

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