磁場を発生させて磁石内蔵のヒレを動かす

 まるでラジコン─。カプセル内視鏡の進む方向や速度を生体の外部から自在に動かせる技術を,龍谷大学と大阪医科大学が共同開発した。イヌで実施した生体実験にも成功し,その成果を2009年6月に米国で開催された世界最大の消化器関連の学会「DDW」で発表した。

 現在実用化されているカプセル内視鏡は,生体の外部からは操作できない。カプセルが進む方向や速度は,食物の消化と同様に,蠕動運動に任せるしかなかった。しかし,外部からの操作が可能になれば,詳しく観察したい個所にカプセルをとどめたり,所望の個所まで素早く移動させたりすることが可能になる。

 これまでにも,同様のコンセプトを打ち出した開発事例は幾つかあった。しかし,動く方向が前後だけだったり,生体実験には至っていなかったりと,研究の段階にとどまっていた。これに対し今回の技術は,「1年以内にヒトでの生体実験を実施し,3年以内に実用化に向けた技術的なメドを付ける」(龍谷大学理工学部 機械システム工学科 教授の大塚尚武氏)と,早期の実用化を強く意図する。カプセル内視鏡に詳しい獨協医科大学 教授で医療情報センター長診療科 消化器内科の中村哲也氏は,「学会などで,この技術は把握している。検診への応用も可能であり,高く評価している」と語る。

『日経エレクトロニクス』2009年7月27日号より一部掲載

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