ASIC/ASSPのような機能が固定されるLSIではなく,より柔軟なプログラマビリティを持つ「ダイナミック・リコンフィギュラブル(動的再構成)技術」の採用事例が,ここ数年で増えてきた。技術の登場から10年近くが経過し,アプリケーションを踏まえた着実な改善が進んだことで,機器メーカーの現場に根差した技術となりつつある。さらに最近では,FPGAにおいても動的な再構成が可能になり始めている。

先駆的なメーカーが採用し始めた

 LSIの回路構成を動的に切り替えられるダイナミック・リコンフィギュラブル(動的再構成)技術。8年ほど前にアイデアが登場し,一時は世界中でさまざまなベンチャー企業が立ち上がるなどブームのような様相を呈した同技術が,ここにきて実際の機器への搭載例を増やし始めた。「システムの稼働中に回路構成を動的に切り替える」という技術的な目新しさばかりが注目された過去とは打って変わり,一部の先駆的な機器メーカーの間で,現場に根差した技術となりつつある。

 例えば複合機の分野では,ダイナミック・リコンフィギュラブル技術の草分けであるアイピーフレックスのLSIが,画像処理アクセラレータとして存在感を高めている。同社のLSIは富士ゼロックス,リコー,東芝テックという日本の大手複合機メーカー3社に相次いで採用され,複合機向け画像処理アクセラレータのデ・ファクト・スタンダードの座を手中に収める勢いだ。

 放送用ビデオ・カメラの分野では,アイピーフレックスと同じくダイナミック・リコンフィギュラブル技術を早くから手掛けてきたNECエレクトロニクスの技術が,ソニーの放送用機器3機種に採用された1)。パナソニックの放送用ビデオ・カメラにも,2006年7月に同社が買収した英Elixent Ltd.の技術が搭載されている。このほか,携帯機器向けに消費電力の低いダイナミック・リコンフィギュラブル技術「Virtual Mobile Engine(VME)」を2002年にいち早く実用化したソニーは2),その後も携帯型音楽プレーヤー「ウォークマン」や,「PSP go」をはじめとする携帯型ゲーム機「PSP」シリーズにVMEを採用し続けている。

第2世代に突入した動的再構成

 こうした採用例の多くは,アイピーフレックスやNECエレクトロニクス,旧Elixent社のように,黎明期から先駆的にダイナミック・リコンフィギュラブル技術を開発してきた企業によるものである。

 ダイナミック・リコンフィギュラブル技術は一時,世界中で多くのベンチャー企業が参入するなど,ブームになった。この中には米QuickSilver Technology社,米Chameleon Systems社,日本のAOIテクノロジーなど,既に開発から撤退し,会社を閉じた事例もある。しかし,それ以外の企業は地道に技術の改善を続け,製品採用という形で成果を出している。

『日経エレクトロニクス』2009年7月27日号より一部掲載

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