TDKは、ホンダの新型ハイブリッド車「インサイト」向けに、DC-DCコンバータを提供した。100Vの2次電池の電圧を鉛蓄電池用に14Vに降圧する。今後は、DC-DCコンバータの主要部品であるトランスの性能の強化を進めることなどで、変換効率の向上と小型化・軽量化を進める。

 TDKは、ハイブリッド車や電気自動車向けに“DC-DCコンバータ”を納めている。電動車両の2次電池の電圧は数100Vと高圧である。DC-DCコンバータは、2次電池の電圧を鉛蓄電池向けに14Vに下げる。鉛蓄電池を電源として、エンジンの補機類やワイパー、ヘッドランプなどが動作する。
 世界初の量産ハイブリッド車が実用化して12年。当社を含めDC-DCコンバータの体積当たりの電力密度は年々向上しており、今後もこの流れは続くと見られる。
 当社がハイブリッド車向けにDC-DCコンバータを実用化したのが1997年。ホンダ向けでは、現行の「シビックハイブリッド」や新型インサイトが採用する(図)。一部の海外メーカーのハイブリッド車にも使われている。
 インサイトが当社製を使う理由は、小型・軽量化の要求に対応できたことである。ホンダはインサイトで、DC-DCコンバータやインバータを含むPCU(パワー・コントロール・ユニット)とNi水素2次電池を小型化した。その結果、シビックハイブリッドでは後席の後ろにこれらを配置していたが、インサイトでは荷室下に配置できた。これまで以上に、荷室を広く使うことができた。DC-DCコンバータの小型化が荷室容量の拡大と低コスト化に寄与した。
 インサイトで使用した最新のDC-DCコンバータはシビックハイブリッドに搭載した従来品に比べて重さを45%、容積を5%低減した。重さは1kgを切った。変換効率は90%以上を確保している。

以下,『日経Automotive Technology』2009年9月号に掲載
図 ホンダの新型ハイブリッド車「インサイト」の後席周辺
小型化したPCU(パワー・コントロール・ユニット)を採用。従来は後席の後ろに配置していたが、小型化により荷室下に配置した。後席後ろを荷室スペースとして利用できる。