燃費向上への貢献がますます求められる乗用車用タイヤ。タイヤメーカー各社が力を入れているのが、転がり抵抗を低減した環境タイヤだ。今回はブリヂストンに従来タイヤの「B’STYLE EX」に比べて10・15モードで4.2%燃費を向上させた「ECOPIA EP100」の技術を聞いた。

 タイヤの構造は、一番内側にインナーライナーと呼ばれる層があり、その上にカーカスと呼ばれる空気抜けを防止する樹脂の層がある(図)。さらに、金属製のベルトと呼ばれる補強層があり、その上に周方向を補強する層が重なっている。加えて、ホイールと接する部分を補強する金属製のビードワイヤがある。こうした多層構造の上を、サイドウォールとトレッド面を形成するゴムで覆う。
 「走る」「止まる」「曲がる」といった基本性能や、「支える」「凹凸の吸収」などの付加機能に加えて、近年、ますます重要になっているのが転がり抵抗の低減だ。転がり抵抗を増す要素は、ゴム分子の末端が動いたり、強化材のカーボンとゴム分子がこすれることによるコンパウンド内部の損失と、クルマが走る際にタイヤが歪むことにより生じる損失に大別される。
 一方で、安全性の面からグリップ性能を低下させるわけにはいかない。転がり抵抗の低減とグリップ性能の確保は両立が難しく、基本的には背反する性能である。しかし、ゴムの粘弾性は入力周波数と温度によって変化することから、転がり抵抗に影響を及ぼす60℃付近における10~100Hzでの粘弾性を下げ、低温でのグリップ性能に影響する0℃付近での104~106Hzでの特性を向上させれば、この二つの特性は両立することができる。

以下,『日経Automotive Technology』2009年9月号に掲載
図 タイヤの構造