コンサルタントの視点
住商アビーム自動車総合 研究所社長 米国公認会計士(CPA) 長谷川博史氏
経営コンサルティング全般と、アライアンス戦略構築やM&Aが専門。複数自動車メーカーの中長期戦略立案プロジェクトなど、幅広いコンサルティングを行う。

 会社は赤字でもつぶれない。しかし、借りたお金を返せなくなる。つぶれてしまうというのが資本主義のルールだ。ここではトヨタ自動車の財務状況を例にとって、最近の自動車メーカーが莫大な資金を借りながら、この資金を顧客に貸すことで、車を売り続けることを可能にしてきた現状を整理する。その上で、一部の自動車メーカー(米GM社・米Chrysler社)のみが、巨額の借金を返済する必要がなくなったことにどういう意味があるのか、読者の皆さんと一緒に考えてみたい。
 企業は(1)株主や銀行から資金を借りながら(2)これらの資金をモノ(資産)に換えて稼働させ(3)再度資金に換える――という一連の活動を繰り返している。(3)の資金が(1)を上回る部分が利潤になるわけだが、ここで見てみたいのは(1)で調達した資金を(2)で何に換えたかという点だ。

以下,『日経Automotive Technology』2009年9月号に掲載