ミヤマは、燃焼室内の多くの点に点火するガソリンエンジンを開発した(図)。既に試作品を動力計に載せて運転しており、40%を超える熱効率を記録した。45%を目標に開発を続ける。実現すればディーゼルエンジン並みの熱効率になる。

 試作したエンジンは燃焼室中央のプラグを残したまま、周囲8カ所からも点火する。シリンダを平面図で見た場合、現在の4弁エンジンのようにプラグがほぼ中央にあると、火炎の伝播距離は中心からシリンダ壁までの距離になる。ボア径のおよそ半分だ。
 周囲からも点火すれば、火炎伝播距離はボア径の1/4と半減する。したがって火炎が全体に広がる時間もほぼ半減するはずだ。定容燃焼器での観察では、35msが25msになるという、半減には届かないが、それに迫る結果を得ている。
 火炎が広がる時間が短ければ、時間損失が少なく、理論サイクルであるカルノーサイクルに近づけられるため熱効率を上げることができる。
 燃焼圧力のピークを同じ時期に揃えようとすれば、多点点火は、点火時期を1点点火より10度ほど遅らせることができる。燃焼室がより小さい時期に、短時間に燃焼させるため、エンジンの冷却損失が少ない。

以下,『日経Automotive Technology』2009年9月号に掲載
図 動力計で試験する
日産自動車「SR」エンジンを改造した。