中国効果でテレビ向け液晶パネル生産に復調傾向

 「予想より早く液晶テレビ向けの需要が復調しつつある」。富士フイルムで液晶パネル向け光学フィルムの営業チームを束ねる八代文夫氏は,ホッとした表情を見せた。同社は2009年7月,液晶パネルの視野角を広げる「WVフィルム」の新工場を稼働させる。当初,同年4月の稼働予定だったが,世界同時不況による需要減で延期していた。ここにきて,中国を中心に,同フィルムを使う中小型の液晶テレビの販売拡大が見込めるため稼働を決めた。

 2008年秋の金融危機以降,液晶パネル関連メーカーは軒並み減産。直前まで新工場の稼働前倒しを検討していた富士フイルムも例外ではなく,フル稼働だった工場稼働率は半分に落ち込んだ。「体験したことがない状況だった」と八代氏は話す。

よりどころは中国の消費刺激策

 2009年春に入り,最悪の状況に底入れの兆しが見え始めている。調査会社の米DisplaySearch社は同年6月,2009年の液晶テレビの「体験したことがない状況だった」と八代氏は話す。世界出荷予測を上方修正。従来の1億2000万台から700万台積み増した。シャープは同年10月,大阪府堺市に建設中の液晶パネル新工場を,ほぼ半年前倒しで稼働させる。液晶関連の材料メーカーによる増産の発表や報道も相次ぐ。液晶テレビ関連だけではない。デジタル・カメラでも,キヤノンが同年7月,ほぼ半年延期していた長崎県の新工場の建設に着工する。デジタル一眼レフの出荷が復調傾向にあるとの判断だ。

『日経エレクトロニクス』2009年7月13日号より一部掲載

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