東京ガスは世界に先駆けて,家庭用燃料電池コージェネレーション・システムである「エネファーム」を一般消費者向けに販売開始した。ガス・メーターの遠隔検針に向けた通信方式の国際標準化に乗り出すなど,新たな領域にも関心を寄せる。同社の技術開発本部長に,新領域に向けた取り組みを聞いた。(聞き手は本誌編集長 田野倉 保雄,本誌副編集長 蓬田 宏樹)

燃料電池は,東京ガスの事業にとってどのような位置付けになっているのでしょうか。

 我々は現在,環境や安全・安心,快適といったテーマの下に,技術開発を進めています。中でも再生可能エネルギーの活用による低炭素化や,都市ガスの有効利用といったテーマを重要視しており,燃料電池もその中の一つです。

 燃料電池は,家庭用のエネルギー市場においては我々の戦略商品であり,今後の需要開拓の切り札とも言えるものです。

 家庭というのは,大変競争が厳しい市場です。例えば電力事業者は,「オール電化」というサービスを核に,これまで伝統的にガス事業者が強い領域だった台所やお風呂の湯沸しなどに進出しています。こうした領域を守るというか,ガスを選んでいただけるように,ガスの優位性を訴えなければならない。

 その際に,燃料電池の「環境性」は,大きなアピール・ポイントになると考えています。燃料電池利用のコージェネレーション・システムであれば,発電の際の熱も有効利用できるからです。

 また,将来,太陽光発電が普及していった際には,燃料電池はさらに有用性を増すでしょう。再生可能エネルギー,特に太陽光発電は不安定な電源であり,電力系統の安定のためにはほぼ同容量のバックアップ電源が必要になると,一般にいわれています。この際に蓄電池を用いようとすると,コストが高くなってしまう。この部分を,ある程度燃料電池で補うことでコストを下げられるのではないでしょうか。

『日経エレクトロニクス』2009年7月13日号より一部掲載

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