雑誌 特集

大衆車プリウス

狩集 浩志,清水 直茂,久米 秀尚=日経エレクトロニクス
2009/07/09 16:00
 

7月13日号を1部買う

第1部<動向>
「205万円」で幕が開く
ハイブリッド車の価格競争

3代目プリウスの205万円という価格は衝撃的だ。経済性と燃費性能を両立する現時点での最適解がハイブリッド車であると証明したからだ。ガソリン車は主役の座から降り,今後はハイブリッド車同士の熾烈な競争が始まる。

2020年の電動車両の大半はハイブリッド車

 トヨタ自動車が2009年5月18日に発売したハイブリッド車「プリウス」の登場は,今後のクルマの主役がガソリン車からハイブリッド車に交代したことを明らかにした。なぜか。安いからである。プリウスの販売価格は205万円から。同程度の出力を有するガソリン車の価格と,ほぼそん色がない。この価格は,コストを度外視した値付けではない。プリウスはトヨタ自動車が月販1万台を目標とする量販車である。205万円でも十分に利益が出るように,コストダウンが図られている。

 これまでハイブリッド車はガソリン車に比べて割高で,燃費の良さに「エコ」なイメージを与えることで,一部の先進的なユーザーを取り込んでいるにすぎなかった。ハイブリッド車に「値ごろ感」が出てくることで,こうした状況が大きく変わる。ハイブリッド車は,ガソリン車に対して大幅に燃費が良いため,燃料費を考慮すれば,ガソリン車より経済的なクルマになる。価格面の障壁がなくなった今,いよいよハイブリッド車は大衆車となる

 しかもハイブリッド車は今後,さらに安くなる。プリウスでは「代を重ねるごとに,ハイブリッド・システムの部品コストを半減させてきた」(トヨタ自動車 第2技術開発本部 HVシステム開発統括部 HVシステム開発室長の高岡俊文氏)。3代目となる今回のプリウスで,初代から部品コストを約1/4まで下げた計算になる。その上,トヨタ自動車はこの原価低減活動が道半ばであると断言する。「次のプリウスに搭載するハイブリッド・システムも半減する」(同氏)方針だ。まだまだコスト削減できるという。

12年分のアドバンテージ

 プリウスは,なぜこれほど安く売れるのか。一言でいえば,膨大な開発時間を低コスト化に費やしてきたからだ。1997年に発売した初代プリウス以来,12年かけて,地道にハイブリッド・システムを小型・軽量化し,製造工程などを細かく見直してきた。

 具体的な手段にマジックはない。例えば,インバータなどを含むPCU(パワー・コントロール・ユニット)に関しては今回,冷却機構やパワー半導体であるIGBTに手を入れるなど地道な努力を積み重ねて,体積を従来品の17.7Lから11.2L,質量は21kgから13.5kgにまで減らした1)。これでPCUのコストを半分近くまで下げた。

 駆動用モータについても,減速ギアを介することで,モータの回転数を高める代わりに必要なトルクを小さくして小型化した。モータのコストについてトヨタ自動車は「かなり良い水準」(高岡氏)とコメントする。この言葉は,同社が電動車両向けのモータ技術開発を,自家薬籠中の物にしつつあることを意味する。

『日経エレクトロニクス』2009年7月13日号より一部掲載

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第2部<徹底解剖>
内製も辞さないトヨタ
割り切りで勝負するホンダ

最新のハイブリッド車や電気自動車の技術動向を,ハイブリッド車ではトヨタ自動車の「プリウス」とホンダの「インサイト」を事例に,電気自動車では三菱自動車の「i-MiEV」と富士重工業の「プラグイン ステラ」を事例に探る。

普及に向けて動きだした電動車両

 自動車市場が世界的な不況に陥っている中,ハイブリッド車や電気自動車など電動車両の販売動向に大きな注目が集まっている。ハイブリッド車では,ホンダが新型「インサイト」を2009年2月に国内で,同年3月に米国で発売した。同年5月にはトヨタ自動車も新型「プリウス」を国内で発売した。電気自動車では,同年6月に三菱自動車と富士重工業が相次いで法人向け販売を国内で開始している。

 特に,トヨタ自動車が2009年5月に発売した新型プリウスは,わずか1カ月の間に国内だけで18万台以上を受注する好調ぶりだ。プリウスよりも3カ月早く発売した新型インサイトも2009年3月に4088台,4月に1万481台,5月に8183台と,順調な販売状況にある。

 ホンダとトヨタ自動車は共に今後,ハイブリッド車の車種を拡充させる計画だ。中でも,ホンダは2010年に「CR-Z」と「フィット ハイブリッド」といった小型ハイブリッド車の投入を表明しており,この分野での開発競争が激化しそうだ。

 トヨタ自動車のプリウスとホンダのインサイトでは,コスト削減に対する方向性に違いが見える。トヨタ自動車は,低コスト化を見込める部品は半導体製品でも,内製も辞さない姿勢で臨む。実際,複数の基幹部品を自社工場で生産している。対するホンダは,ハイブリッド・システム自体の構成を工夫することで,ガソリン車との価格差を最小限に抑える戦略に出た。

 市販化を表明する自動車メーカーが相次ぐ電気自動車は今のところ,電池のコスト削減が最大の障壁として立ちはだかっている。2009年6月に販売を開始した三菱自動車の「i-MiEV」や富士重工業の「プラグインステラ」では「車両価格の半分以上がLiイオン2次電池のコスト」(三菱自動車)である。では,プリウスとインサイト,i-MiEV,プラグインステラについて車種ごとに特徴を紹介しよう。

『日経エレクトロニクス』2009年7月13日号より一部掲載

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