「できる限り早く戦力になってほしい」。これが多くのメーカーが技術系新入社員に対して抱く“本音”だ。だが,そのために必要なことを,本当に新入社員研修で教えているだろうか。富士ゼロックスは,新入社員を即戦力化するための一つの条件を「問題解決力」と判断。ストローを使った橋のモデルを製作させ,強度などを競うことで,問題解決のための基本的な方法を新入社員にたたき込む研修を開始した。

「まだ大丈夫。どんどん水を入れていいよ」
「OK!」
「あ,ちょっとヤバイ! ここからもっとゆっくり」
「これぐらい?」
「うん,そう。あーっ,壊れた!」

 熱気がこもる会場に,富士ゼロックスの技術系新入社員(以下,新入社員)の声が響き渡る。2009年4月に入社した110人の新入社員が9~10人ずつに分かれてチームを組み,真剣な眼差しで臨んでいるのは「ストロー橋」の耐荷重競技だ。同社が新入社員研修の一環として,2008年から始めた実習である。

 ストローを材料に橋を設計して製作する(図1)。ストローの長さや形状は,用意されたはさみや穴開けパンチなどの文房具を使って自由に加工して構わない。だが,テープや接着剤の使用は不可。あくまでもストローだけで接続方法を考えなければならない。

図1●新入社員がチームになって造った「ストロー橋」
ストローをはさみや穴開けパンチなどで加工し,より強度の高い橋を造る。また,ストローの使用量が少ないほど順位が高い開発効率(コスト評価)や,外観品質も競う。

 完成したストロー橋は50cm離れた台座(テーブル)の上に,固定せずに架け,バケツにつながったベルトをストロー橋の中央に掛ける。このバケツに,チームの代表者がペットボトルに入れた水を注いでいく。そして,ストロー橋を壊さずに保持できたバケツを含む水の質量(耐荷重)を,ストロー橋の質量で割ったものを強度として,順位を競う(図2)

図2●ストロー橋の耐荷重競技のルール

〔以下,日経ものづくり2009年7月号に掲載〕