シンドラーエレベータ(以下シンドラー,本社東京)は2009年5月,東京都港区の集合住宅「シティハイツ竹芝」に設置された同社製エレベータで約3年前に発生した死亡事故に関する報道機関向けの技術説明会を開催した。同社として初めて,事故原因に関する技術的見解を明らかにしたものである(図)。

 ここでは,同社の分析による事故発生までの経緯を示すとともに,再発防止の観点に立って,事故原因の可能性について検証する。

ソレノイドの推力が低下

 3年前の事故は,エレベータのトビラ(戸)が開いた状態でカゴが上昇する(以下,戸開走行)という,本来エレベータではあってはならない現象が起きて発生した。この戸開走行の原因を突き止めることこそが,事故の再発防止には不可欠だ。

 戸開走行の原因について,シンドラーは技術説明会において,「巻上機のブレーキが正常に機能していなかったため」と断定した。事故現場で実機を確認したところ,ブレーキが利かない状態だったという。

〔以下,日経ものづくり2009年7月号に掲載〕

図●技術説明会で使用したスライドの一部
事故発生直後の写真や,シンドラーエレベータが独自に実施した再現実験の写真を交えながら,事故原因についての見解を説明した。