写真:菅野勝男

 10数年前,製造アウトソーシングの業界に他業界から転職してきた時,大手メーカーの工場に「請負」という形で人が送り込まれているのを知ってびっくりしましたよ。何しろ,そんなことは公になっていない時代でしたから。でもそのころ既に,大手メーカーのほとんどが,まだ小規模ながらも請負を使い始めていましたね。

 応募してくる人にも驚きました。仕事の面接なんだから,スーツやそれらしい格好で来ると思うじゃないですか。そしたら,いきなり雪駄に短パン。聞いてみると,職がもう半年くらいなくて,奥さんと2人の子どもがいると言うんです。

 当時は,細かいことは気にせずどんどん採用というのが業界の常識でした。しかし僕はどうにも割り切れず,そんな状態でいいと思っているのかと彼に文句を言ってしまった。「おまえに言われる筋合いはない」と言い返され,つかみ合いになりまして(笑)。僕は「着替えてちゃんとしてきたら面接してやる」って帰らせた。そうしたらね,また来たんです。一応ブレザーみたいなものを着て。それで採用したんですが,長いこと勤めてくれました(笑)。「社長とつかみ合ったのはオレくらいのもの」って,仲間に自慢してたらしいけど。

〔以下,日経ものづくり2009年7月号に掲載〕(聞き手は本誌編集長 原田 衛)

小野文明(おの・ふみあき)
日本マニュファクチャリングサービス 代表取締役社長
1959年長崎県生まれ。1982年東洋大学法学部卒業。テキスタイル会社,教育研修会社などを経て,1996年テクノブレーン入社,アウトソーシング事業部を立ち上げる。1999年にテスコと事業合併し,2000年に現社名に社名変更。2002年から現職。2004年にMBO(経営陣による企業買収)を実施,2007年10月にジャスダック証券取引所に上場。趣味は料理と庭仕事で,得意料理はエビのチリソース煮と筑前煮。