10数年前,製造アウトソーシングの業界に他業界から転職してきた時,大手メーカーの工場に「請負」という形で人が送り込まれているのを知ってびっくりしましたよ。何しろ,そんなことは公になっていない時代でしたから。でもそのころ既に,大手メーカーのほとんどが,まだ小規模ながらも請負を使い始めていましたね。
応募してくる人にも驚きました。仕事の面接なんだから,スーツやそれらしい格好で来ると思うじゃないですか。そしたら,いきなり雪駄に短パン。聞いてみると,職がもう半年くらいなくて,奥さんと2人の子どもがいると言うんです。
当時は,細かいことは気にせずどんどん採用というのが業界の常識でした。しかし僕はどうにも割り切れず,そんな状態でいいと思っているのかと彼に文句を言ってしまった。「おまえに言われる筋合いはない」と言い返され,つかみ合いになりまして(笑)。僕は「着替えてちゃんとしてきたら面接してやる」って帰らせた。そうしたらね,また来たんです。一応ブレザーみたいなものを着て。それで採用したんですが,長いこと勤めてくれました(笑)。「社長とつかみ合ったのはオレくらいのもの」って,仲間に自慢してたらしいけど。
〔以下,日経ものづくり2009年7月号に掲載〕(聞き手は本誌編集長 原田 衛)
日本マニュファクチャリングサービス 代表取締役社長