雑誌 特集

特許の壁を壊せ

2009/06/30 18:00
 

現行の特許制度が時代にそぐわなくなってきた。結果,産業振興に貢献すべき特許が,逆に技術革新の障害になるケースも増えている。現状を乗り越えるには,特許にまつわる「壁」を打ち壊す必要がある。ここに示したチェックシートでチェック項目の多い章に,あなたが壊すべき壁のヒントがきっとある。(池松由香,荻原博之)

プロローグ:最強の「破壊者」現る

 「特許申請」と聞いて,まず何を思い浮かべるだろうか。「ドキドキ,ワクワクする物」「自分のアイデアが形になる喜びを味わえる物」「お金をたくさん稼げる物」。そんなふうに答える技術者は,かなり少ないだろう。現代の多くの技術者にとって特許の取得プロセスは,無味乾燥で面倒で,運が良ければ数万円程度の小遣い稼ぎができるものにすぎない。

 しかし,そんな特許にまつわる状況が,ある企業によって一変するかもしれない。米特許管理会社IntellectualVentures(IV)社(本社米国ワシントン州ベルビュー市)が2007年,東京都内に日本法人を設立したのだ。
〔以下,日経ものづくり2009年7月号に掲載〕

Intellectual Ventures(IV)社のビジネスモデル

1章 創る:さらば「自前主義」

 ある素材メーカーの開発部門で技術者のサポート業務に従事する女性,Aさん。「最近,技術者の方々が疲れているみたい」と心配そうな表情を見せる。理由は,上司が部下の技術者たちに特許の仕事ばかりをさせているからだ。「上司はいつも『特許は何件,出したんだ?』『今月のノルマはもう達成したのか?』ってまくしたてる。あれでは仕事も楽しくないんじゃないかな」とAさんは言う(図1)。

 そもそも特許は,技術の進歩を促進するための制度である。発明者は,発明した技術の中身を世間に明かす代わりに,その技術を一定期間,独占する権利を与えられる。しかし,今,技術者に与えられる特許の仕事の多くは「進歩の促進」というより「競合他社の邪魔」をする仕事に成り下がっている。なぜ,こんなことになってしまったのか。
〔以下,日経ものづくり2009年7月号に掲載〕

図1●技術者に重くのしかかる「特許の仕事」
技術者の多くは会社の上司から,特許関連業務の重石を載せられている。

2章 売る:特許に「商品力」を

 自社で使わない未利用特許は,競合他社だって要らない。そんな特許には,買い手がなかなか見つからないのが現実だ」。こう語るのは,特許のライセンス活動に積極的な富士通で知的財産権本部本部長代理兼知的財産戦略室長を務める亀井正博氏。事実,未利用特許主体の現在の特許流通市場において,ライセンス契約に至る確率は極めて低い。「千三つ」などと揶揄されるゆえんである。

 こうしたお寒い状況を招いている理由はズバリ,取引対象の特許自体が商品としての魅力に欠けること。商品であるなら,顧客がお金を払ってでも手に入れたいと思わせるだけの「価値」が必要だ。それなのに,コア技術に関連する基本特許などを除けば,多くの特許が自社活用だけを考えた(汎用性を欠いた)ものだったり,クロスライセンスや防衛が主目的で社会的な有用性を意図しないものだったりする。こんな特許では,顧客は見向きもせず,特許流通市場が活気づくわけがない。

 知的財産の流動化事業を手掛けるIPトレーディング・ジャパン(本社東京)の代表取締役社長兼CEOの梅原潤一氏は, 「特許はその権利性だけではなく,将来の収益性も重要になるのに,日本の企業はその点をあまり考えていない」と,上述の問題の原因を特許の出し方自体に求める。

 そこで2章では,特許流通を本格化させるための特許の商品力の高め方について見ていく。
〔以下,日経ものづくり2009年7月号に掲載〕

3章 買う:大手に眠る「掘り出し品」

 2章の後半で,特許流通市場を活性化させるにはライセンサー(売り手)とライセンシー(買い手)がWin-Winの関係になることが絶対条件であり,そのためにはライセンシーの事業化に対しライセンサーの協力が不可欠と指摘した。

 ここで懸念されるのは,ライセンサーが大手企業,ライセンシーが中小企業の場合に,中小企業が大手企業に全面的に頼りがちな点だ。実際問題,大手企業の協力だけでは事業化は図れない。時には独自の技術開発も必要になるし,時には大企業相手にライセンス料など面倒な交渉も必要になる。何より,最終的に特許を事業に結び付けるのは中小企業自身なのである。

 こうした観点から,3章では中小企業が大企業の特許を利用する上での留意すべきポイントを,成功事例から探る(図2)。
〔以下,日経ものづくり2009年7月号に掲載〕

図2●ライセンサーが大手企業,ライセンシーが中小企業の場合の問題点と解決策
ライセンス契約の締結に伴い,中小企業が大手企業の技術支援を受けられるとなったときに,中小企業が大手企業に頼り切る恐れがある。しかし事業化するのは,ほかならぬ中小企業自身。自社のコア技術や販路をベースに,主体的に動く必要がある。さらに,大企業は中小企業の実態を知らず,中小企業についてはライセンス契約の経験がなかったり知財担当者が不足したりしているため,交渉過程では互いに衝突することが間々ある。こうした両者の仲介役を演じるのが,コーディネーターという第三者の存在。交渉仲介だけではなく,利害調整や補助金獲得の支援など,さまざまな役割を果たす。

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