LEDで1Gビット/秒を実現するために採用した二つの技術

 従来の最大データ伝送速度が100Mビット/秒だった赤外線通信「IrDA」。これを一気に10倍の1Gビット/秒以上に高めた新規格「Giga-IR」の最終仕様(Version 1.0)が固まった。

 光源には880nmの半導体レーザのほか,同じ波長のLEDも使える。LEDが使えるメリットは大きい。レーザに比べてLEDはかなり安価なため,その分だけ部品コストを削減できるからだ。ただし,LEDはオン/オフ時の応答速度が低く,そのままでは約300Mビット/秒の通信が限界という課題を抱えていた。この課題は二つの技術の採用で解決した。一つはプリエンファシスである。LEDを駆動する信号の立ち上がり時と降下時の供給電流の変化を意図的に過剰にする技術だ。この結果,フォトダイオードで受信した際,立ち上がりと降下で急峻な波形が得られ,ビット誤り率が抑えられる。もう一つは4値ASK変調である。既存規格は2値ASK変調を採用していた。なお,データは8B10Bで符号化した上で,4値ASK変調をかけて送信する。

 Giga-IRがまず狙う用途は,画像や動画の瞬間転送だ。例えば,携帯電話機にGiga-IRを搭載すれば,撮影した映像をテレビやHDDレコーダーなどに瞬時に送ることが可能になる。2010年には,対応する携帯電話機が登場するという。

『日経エレクトロニクス』2009年6月29日号より一部掲載

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