Broadcom社は2009年4月,米国や欧州で4年間にわたって繰り広げてきた特許侵害訴訟で,米Qualcomm Inc.と和解した。Bluetoothや無線LANの通信IC市場でシェア1位を誇るBroadcom社にとって,今回の和解にどのような意味があったのか。そして,今後同社はどのような発展を目指していくのかを聞いた。(聞き手は竹居 智久,蓬田 宏樹)

─ついにQualcomm社と和解しました。このタイミングで和解に至った理由を教えてください。

 争いを続けていると,多額の法務費用が掛かります。そこにお金を掛けるよりも,良い製品を作って顧客に提供するというイノベーションに投資するべきではないか─。両社が競争力を失わないためにこのように考え,互いに少しずつ妥協し合った結果が今回の和解でした。

 この結果に,我々はおおむね満足しています。Qualcomm社もそうだと思います。今回の和解では,利用できる知的財産権を互いに,明確に定義しました。今後は,両社が知的財産権に関する法的な闘争をけしかけ合うことはありません。無線通信の業界にとっても,将来に対する不透明性がなくなったという点で良かったのではないでしょうか。

─長年争ってきたBroadcom社とQualcomm社は,今後どのような関係になっていくのでしょう。

 ソニーの一部であることで,業界で一目置かれるようにもなった。例えば,世界標準に口を出せるようになった。実際私は,DRMを相互運用するための標準を策定する団体DECE(Digital Entertainment Content Ecosystem)にかかわっている。

 両社が競合企業であるという関係は,これまでと全く変わりません。しかし,今後は何らかの作業を協力して進めるようなこともあるでしょう。

 以前,Broadcom社が米Intel Corp.と知的財産権に関する訴訟を繰り広げたことがありました。今や我々とIntel社は,無線LANのコミュニティーを強力なものとするために力を合わせ,意見を交わしたり,そのコミュニティーで一緒に標準規格をまとめたりしています。競合関係にある企業同士でも,共通の利益のために協力することがあるのです。Qualcomm社と我々の間でも,同様のことが起こるかもしれません。

『日経エレクトロニクス』2009年6月29日号より一部掲載

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